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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと

暁は身体を震わせ、大紋の腕を振り払おうとする。
「…やめてください…!聴きたくない…!」
「…君はもう、僕を愛していない…⁈もう、僕のことなんかこれっぽっちも思っていない…⁈…教えてくれ、暁…‼︎」
大紋は数年振りに腕の中に抱きしめた愛しい人を二度と離したくないかのように、暁を力の限り抱きすくめる。
…遠い遠い異国の花のような切ない薫り…何度も夢に見た暁の薫りだ…。
そのほっそりとした白い首筋に貌を埋める。
「…言ってくれ…暁…!」
暁は渾身の力を振り絞り、男を突き放す。
「愛していません…!もう、貴方のことなんか…忘れました…。僕の心に、貴方のことなんか、これっぽっちも残ってはいません…」
暁の射干玉の闇のような瞳には水晶のような涙が浮かんでいる。
「嘘だ…!」
尚も追い縋る男の手を、暁は冷酷に振り切る。
「嘘でも…僕達はそう思わなくてはならないのです…。貴方の…大切なご家族の為に…。
…それに…僕は月城を愛しています。…彼を誰よりも愛しています。…もう、こんなことはなさらないでください」
暁は、男を振り切り歩き出す。
「…暁!」
男の声を振り払うかのように、足早に回廊に走りこむ。
泉は柱の奥から更に身を隠そうとして、靴先が大理石の床に引っかかってしまう。
…硬い石の音が響く。
暁がはっと、柱の影の泉を見上げる。
「…泉くん…」
泉が何かを言おうと口を開いた時、暁はそのまま回廊を駆け出した。
「…暁様!」
泉は慌てて暁を追いかける。
暁は回廊を抜け、庭園に降りる。
屋敷とは反対側の噴水がある奥の庭園に、逃げ込むように走り抜ける暁を泉は俊敏に追いかける。
「…暁様!お待ち下さい!」
…暁は、アフロディーテの石像のほとりで脚を止め、泉に背を向けたまま、小さな声で呟く。
「…軽蔑した?」
「…暁様…」
「…聞いての通りだ。僕は春馬さんと恋人同士だった…。訳あって別れたけれど…ずっと好きだった人だ…。
…ずっと好きだったから…はっきりと振り切れない…。月城がいるのにね…」
…何と言っていいか、分からない。
けれど…暁が傷ついているのは分かる。
胸が痛いほどに分かる。
暁が泉を振り返る。
哀しいまでに美しい眼差しが泉を見据える。
「…今の話を、兄さんには言わないで欲しい。…自分の為じゃない。兄さんを困らせたくないんだ」
泉は叫んだ。
「…い、言いませんよ!絶対に!」
「…やめてください…!聴きたくない…!」
「…君はもう、僕を愛していない…⁈もう、僕のことなんかこれっぽっちも思っていない…⁈…教えてくれ、暁…‼︎」
大紋は数年振りに腕の中に抱きしめた愛しい人を二度と離したくないかのように、暁を力の限り抱きすくめる。
…遠い遠い異国の花のような切ない薫り…何度も夢に見た暁の薫りだ…。
そのほっそりとした白い首筋に貌を埋める。
「…言ってくれ…暁…!」
暁は渾身の力を振り絞り、男を突き放す。
「愛していません…!もう、貴方のことなんか…忘れました…。僕の心に、貴方のことなんか、これっぽっちも残ってはいません…」
暁の射干玉の闇のような瞳には水晶のような涙が浮かんでいる。
「嘘だ…!」
尚も追い縋る男の手を、暁は冷酷に振り切る。
「嘘でも…僕達はそう思わなくてはならないのです…。貴方の…大切なご家族の為に…。
…それに…僕は月城を愛しています。…彼を誰よりも愛しています。…もう、こんなことはなさらないでください」
暁は、男を振り切り歩き出す。
「…暁!」
男の声を振り払うかのように、足早に回廊に走りこむ。
泉は柱の奥から更に身を隠そうとして、靴先が大理石の床に引っかかってしまう。
…硬い石の音が響く。
暁がはっと、柱の影の泉を見上げる。
「…泉くん…」
泉が何かを言おうと口を開いた時、暁はそのまま回廊を駆け出した。
「…暁様!」
泉は慌てて暁を追いかける。
暁は回廊を抜け、庭園に降りる。
屋敷とは反対側の噴水がある奥の庭園に、逃げ込むように走り抜ける暁を泉は俊敏に追いかける。
「…暁様!お待ち下さい!」
…暁は、アフロディーテの石像のほとりで脚を止め、泉に背を向けたまま、小さな声で呟く。
「…軽蔑した?」
「…暁様…」
「…聞いての通りだ。僕は春馬さんと恋人同士だった…。訳あって別れたけれど…ずっと好きだった人だ…。
…ずっと好きだったから…はっきりと振り切れない…。月城がいるのにね…」
…何と言っていいか、分からない。
けれど…暁が傷ついているのは分かる。
胸が痛いほどに分かる。
暁が泉を振り返る。
哀しいまでに美しい眼差しが泉を見据える。
「…今の話を、兄さんには言わないで欲しい。…自分の為じゃない。兄さんを困らせたくないんだ」
泉は叫んだ。
「…い、言いませんよ!絶対に!」

