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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
「…お顔のお色がまだすぐれませんね…」
じっと観察するように、眼鏡の奥の怜悧な瞳で見つめられる。
暁の鼓動は苦しいほど高鳴った。
「…月城…」
暁の蒼ざめた頬を温めるようにひんやりとした美しい手が、優しく撫でる。
「…昨夜は、余りお話ができませんでしたね…」
珍しく寂しそうな声が響く。
…昨夜は人も多く、月城は綾香と梨央の護衛に付いていたので、場所も離れていた。
言葉も二言三言しか交わせていなかったのだ。

「…そうだね…」
昨夜の混沌とした記憶が目まぐるしく蘇る。

…春馬さんにも抱きしめられてしまった…。
僕は…どうかしていた…。
月城に合わせる貌がない…。
思わず俯く暁の貌を、優しく自分に向けさせる。

「…昨夜の夜会では、ご立派な紳士方や素晴らしい青年貴族の方々がたくさん来ておられました。
…その中の多くの方々が、暁様に注目しておられました」
「…そうだったかな…」
他人の視線には無頓着な暁は全く気づかなかった。

「…暁様がその方々に心惹かれたら…と、気が気ではありませんでした…」
暁ははっとして月城を見上げる。
…月城は本来、そのようなことは口にはしない。
嫉妬もやきもちも、暁の方が専売特許だったのだ。
「…君が…そんなことを言うなんて…」
…こんな日でなかったら…どれほど嬉しいか…。
暁の胸はずきりと痛んだ。

月城は、暁の頬を愛しげに愛撫するかのように指を走らせる。
「…私はいつでも心配していますよ。…貴方が他の誰かに心惹かれたら…と。…貴方のように類い稀な美しさを誇る方は二人といない。…その魅力に他の人が気づかないはずはない。…貴方が私の恋人でいてくださる奇跡に、私は毎日感謝しているのですよ…」
…もう辛すぎて、月城の言葉が耳に入らない。
「…月城…!」
暁は月城に強く抱きついた。
月城のシャツからはあえかな水仙の薫りが立ち昇る。
暁は涙ぐみながら、男の胸に貌を埋める。

「…暁様…?泣いておられるのですか…?」
…いつもより、繊細な様子の暁を月城は、まだ身体が本調子ではないのだと判断した。
「…やはりまだご体調がすぐれないご様子ですね。…少し寝室でお休み下さい。…さあ、私がお連れします」
優しく引き上げようとする月城の手を、暁は強く握りしめる。
「…そうじゃないんだ…。月城…僕は…」
…暁は、男を潤んだ瞳で見つめた。




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