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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
泉は朝から何十回目かの溜息を吐いていた。
…昨夜の記憶が朝から何回も蘇り、その度に…
「あああ〜〜ッ‼︎」
と、叫んでは生田にじろりと睨まれていた。

もしかして、朝食室の給仕で暁に会えるかも…とドキドキしながら焼き立てのクロワッサンを運んだのだが、暁は既に帰宅した後だった。

がっかりする暁の耳に、礼也と光の会話が入って来た。
「暁さんはもう帰られてしまったの?」
「…ああ、昨夜急に頭痛がすると途中で退席してしまったから心配していたのだが、今朝貌を見に行ったらもう帰る支度をしていたよ」
…医者を呼ぶから休んで行きなさいと言ったのだが…と、案ずるような礼也の話を聞いて泉は、やはり暁は自分とのキスがショックで、体調を崩し早々に帰ってしまったのだと思った。

泉は、暁に申し訳なく思いつつも…けれど、キスをしたことは後悔していなかった。
好きだと告げたことも後悔していなかった。

泉は貴保子に再会し、別れの真相を告げられたことよりも、今や暁のことで頭の中は一杯であった。

…暁様が好きだ…!
ずっと、もやもやした落ち着かない気持ちは恋だったのだと悟った。
暁は昨夜自分を抱きしめ、優しく慰めてくれた。
暁の人形のように美しく繊細な美貌を目の前にして、泉は我を忘れて彼にキスをした。
…暁の唇は柔らかく、淡雪のように溶けてしまいそうな儚さであった。

暁はもちろん抗った。
しかし、無理矢理に唇を重ねてしまった。

…きっと暁様は怒っていらっしゃるだろうな…。
俺のことを嫌いになったかな…。
そう思うといてもたってもいられなかった。
暁様に会って、謝りたい!
…そして、改めて自分の思いを伝えたい…!

…だが、その前に立ちはだかるのは…。

泉の脳裏に兄の氷のように研ぎ澄まされた冷ややかな美貌が浮かんだ…。

…兄貴だ…。
兄貴を倒さないと、俺は暁様に近づけない…。

だけど、あの兄貴から暁様を奪えるのか…?

…完璧な美貌、知性、品位、能力、教養、度量…
どれも勝てる気がしない泉は、再び溜息をついた。

…そんな泉の耳に、薫の泣き声が聞こえてきた。
泉は条件反射的に立ち上がる。

また福さん、どこかに行ったのかな?
子供部屋に続く大階段を登りながら、声を掛ける。
「薫様!今行きますよ!ちょっとお待ち下さいね!」

…恋に悩んでも、薫のことは決して忘れない泉であった。


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