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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと

「…な、なんでそれを…⁉︎」
震える足で後退りする泉に、月城は更に一歩近づく。
「お前の行動など全て把握している。…駆け落ちに失敗し、伊勢谷家をクビになったお前に黒田公爵家の下僕の職を世話したのは私だぞ。忘れたのか?」
「…そ、そうだった…け…。あの時はどうも…て、ちょっと!あんた!…ち、近いんだけど!」
月城がじりじりと距離を詰めるので泉は既に蔓薔薇が絡まる四阿の壁に背中を押し付けられている格好だ。
…傍らの乳母車の中から、それを見た薫が嬉しそうに声を上げる。
「…か、薫様…俺は遊んでいる訳じゃないんだけど…」
薫に弱ったような笑い顔を見せる泉の貌を月城が有無を言わさずに、己に向ける。
…おい…眼がマジだ…‼︎
月城は静かにまるで物語を紐解くかのように語り始めた。
「…貴保子様は、昨夜、庭園に長いことおられた。…お前も庭園にいた。…そして、暁様もそこにおられた。
…暫くして野々宮氏が庭園に貴保子様を探しに行かれた風情だった。…ほどなくしてご夫妻は舞踏室に戻られた。…野々宮夫人は心なしか意気消沈しておられた。
…それから暫くして…お前が慌てふためいた様子で屋敷に戻ってきた。…最後に庭園から帰ってこられた暁様は、なぜか舞踏室にはお戻りにならずに、体調を崩されてお部屋に引き込まれた…」
…月城の手が痛いほどに泉の顎を掴む。
「…へ…え…。兄貴、探偵になれるね。凄い観察力…ひっ!」
月城の眼鏡越しの眼差しが猛禽類のそれのように鋭く光り、泉の目の前に迫る。
「…何をした?暁様に」
「…な、な、何もしてないって…わ〜っ‼︎」
月城の手が泉の鼻先を掠めるように、四阿の壁に激しい振動と共に叩きつけられた。
薫がきゃー‼︎と甲高い歓声を上げた。
大好きな泉と泉に良く似た男が遊んでいると思っているのだろう。
「…か、薫様〜ッ‼︎た、助けて〜‼︎」
壁が再び叩かれる。
「…おい、正直に話した方が身の為だ。…私は今、相当に気が立っているのだ。自分を御する自信はない…例え実の弟相手でも…」
泉の身体の両側に手をつき、身動ぎも出来ぬように追い詰められた。
…嘘でも吐こうものなら、その瞬間縊り殺されそうな恐ろしい殺気を感じる。
泉は観念し、両手を上げた。
「わ、わかったよ。話すよ、話す!」
…俺はとんだ甘ちゃんだった。
こんな鬼気迫るような頭のイカレた奴に敵うわけがなかったのだ…。
震える足で後退りする泉に、月城は更に一歩近づく。
「お前の行動など全て把握している。…駆け落ちに失敗し、伊勢谷家をクビになったお前に黒田公爵家の下僕の職を世話したのは私だぞ。忘れたのか?」
「…そ、そうだった…け…。あの時はどうも…て、ちょっと!あんた!…ち、近いんだけど!」
月城がじりじりと距離を詰めるので泉は既に蔓薔薇が絡まる四阿の壁に背中を押し付けられている格好だ。
…傍らの乳母車の中から、それを見た薫が嬉しそうに声を上げる。
「…か、薫様…俺は遊んでいる訳じゃないんだけど…」
薫に弱ったような笑い顔を見せる泉の貌を月城が有無を言わさずに、己に向ける。
…おい…眼がマジだ…‼︎
月城は静かにまるで物語を紐解くかのように語り始めた。
「…貴保子様は、昨夜、庭園に長いことおられた。…お前も庭園にいた。…そして、暁様もそこにおられた。
…暫くして野々宮氏が庭園に貴保子様を探しに行かれた風情だった。…ほどなくしてご夫妻は舞踏室に戻られた。…野々宮夫人は心なしか意気消沈しておられた。
…それから暫くして…お前が慌てふためいた様子で屋敷に戻ってきた。…最後に庭園から帰ってこられた暁様は、なぜか舞踏室にはお戻りにならずに、体調を崩されてお部屋に引き込まれた…」
…月城の手が痛いほどに泉の顎を掴む。
「…へ…え…。兄貴、探偵になれるね。凄い観察力…ひっ!」
月城の眼鏡越しの眼差しが猛禽類のそれのように鋭く光り、泉の目の前に迫る。
「…何をした?暁様に」
「…な、な、何もしてないって…わ〜っ‼︎」
月城の手が泉の鼻先を掠めるように、四阿の壁に激しい振動と共に叩きつけられた。
薫がきゃー‼︎と甲高い歓声を上げた。
大好きな泉と泉に良く似た男が遊んでいると思っているのだろう。
「…か、薫様〜ッ‼︎た、助けて〜‼︎」
壁が再び叩かれる。
「…おい、正直に話した方が身の為だ。…私は今、相当に気が立っているのだ。自分を御する自信はない…例え実の弟相手でも…」
泉の身体の両側に手をつき、身動ぎも出来ぬように追い詰められた。
…嘘でも吐こうものなら、その瞬間縊り殺されそうな恐ろしい殺気を感じる。
泉は観念し、両手を上げた。
「わ、わかったよ。話すよ、話す!」
…俺はとんだ甘ちゃんだった。
こんな鬼気迫るような頭のイカレた奴に敵うわけがなかったのだ…。

