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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
暁人とは同い年の12歳…。
正確には暁人の方が8ヶ月ばかり年上である。
父親同士が無二の親友なので、二人は物心つく前からの幼馴染みだ。
家もよく行き来をするし、幼稚舎から通っている星南学院の小等部…そしてこの春進学した中等部でもクラスも一緒だ。
暁人は年より遥かに大人びて見える端整な容姿と背丈と雰囲気を兼ね備えたクラスでも一目置かれる存在だ。
文武両道に秀でていて、人を纏める力もある上に思いやりがあり誰にでも優しいので、毎年学級委員長を任せられるほど人気者だ。
気が強い癖に人見知りをする薫にとって、暁人は心許せる数少ない友人の一人である。
…しかし、最近薫は暁人が時々鬱陶しく感じることがある…。
「…シャツはそれでいいな。…そのズボンに合わせるなら…」
暁人は薫の格好を見るなり、まるで自分の部屋のクローゼットのように扉を開くと迷いなくカフェ・オ・レ色のジャケットを持って来て、薫に当てて見せる。
「…薫は色が白くて貌立ちが綺麗だから、こういう洒落た色合いがよく似合う…」
ふっと笑う様子もまるで年嵩のそれだ。
…褒められているのは解るが、まるで子ども扱いされているようで面白くない。
「…どうせ女の子みたいな軟弱な貌だって言いたいんだろう?」
ふんと鼻を鳴らし、暁人の手からジャケットをひったくる。
手荒にジャケットを着込む薫に、暁人は宥めるように言う。
「そんなこと言ってないじゃないか。…薫はすごく綺麗だ。薫みたいに綺麗な子は、女の子だっていやしない…」
クローゼットから選んだラベンダー色の水玉のリボンタイを暁人は器用に薫に結んでやりながら、そうやや熱っぽく語った。
…自然と、近い距離で目が合う。
薫に長く濃い睫毛越しに見つめられ、暁人は動揺したように目を伏せる。
…最近、暁人のこんな視線が鬱陶しいのだ。
気がつくと、いつも薫を伺うようにじっと見つめている。
薫が見ると、慌てて目を逸らす。
…変な奴…。
薫は心の中で呟き、寝台に乱暴に腰掛ける。
そして、履きかけの臙脂色の革靴の脚を暁人に差し出し命令するように告げる。
「暁人、履かせて」
不器用な薫は靴紐を結ぶのが大嫌いなのだ。
暁人は眩しげに薫を見ると、黙って跪いた。
自分より背が高い暁人が跪くととても小さく見えるのが、気分が良かった。
暁人は宝物に触れるように、そっと薫の脚に触れた。
正確には暁人の方が8ヶ月ばかり年上である。
父親同士が無二の親友なので、二人は物心つく前からの幼馴染みだ。
家もよく行き来をするし、幼稚舎から通っている星南学院の小等部…そしてこの春進学した中等部でもクラスも一緒だ。
暁人は年より遥かに大人びて見える端整な容姿と背丈と雰囲気を兼ね備えたクラスでも一目置かれる存在だ。
文武両道に秀でていて、人を纏める力もある上に思いやりがあり誰にでも優しいので、毎年学級委員長を任せられるほど人気者だ。
気が強い癖に人見知りをする薫にとって、暁人は心許せる数少ない友人の一人である。
…しかし、最近薫は暁人が時々鬱陶しく感じることがある…。
「…シャツはそれでいいな。…そのズボンに合わせるなら…」
暁人は薫の格好を見るなり、まるで自分の部屋のクローゼットのように扉を開くと迷いなくカフェ・オ・レ色のジャケットを持って来て、薫に当てて見せる。
「…薫は色が白くて貌立ちが綺麗だから、こういう洒落た色合いがよく似合う…」
ふっと笑う様子もまるで年嵩のそれだ。
…褒められているのは解るが、まるで子ども扱いされているようで面白くない。
「…どうせ女の子みたいな軟弱な貌だって言いたいんだろう?」
ふんと鼻を鳴らし、暁人の手からジャケットをひったくる。
手荒にジャケットを着込む薫に、暁人は宥めるように言う。
「そんなこと言ってないじゃないか。…薫はすごく綺麗だ。薫みたいに綺麗な子は、女の子だっていやしない…」
クローゼットから選んだラベンダー色の水玉のリボンタイを暁人は器用に薫に結んでやりながら、そうやや熱っぽく語った。
…自然と、近い距離で目が合う。
薫に長く濃い睫毛越しに見つめられ、暁人は動揺したように目を伏せる。
…最近、暁人のこんな視線が鬱陶しいのだ。
気がつくと、いつも薫を伺うようにじっと見つめている。
薫が見ると、慌てて目を逸らす。
…変な奴…。
薫は心の中で呟き、寝台に乱暴に腰掛ける。
そして、履きかけの臙脂色の革靴の脚を暁人に差し出し命令するように告げる。
「暁人、履かせて」
不器用な薫は靴紐を結ぶのが大嫌いなのだ。
暁人は眩しげに薫を見ると、黙って跪いた。
自分より背が高い暁人が跪くととても小さく見えるのが、気分が良かった。
暁人は宝物に触れるように、そっと薫の脚に触れた。