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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
暁人の手が、適当に履いてぐずぐずになっている薫の黒い靴下に伸びる。
器用に靴下を履かせてやりながら、どこかうっとりしたような口調で呟く。
「…薫の脚は白くてほっそりとしていて…綺麗だな…」
暁人の手がおずおずと脹脛を撫でた。
「くすぐったいってば‼︎」
薫の靴先が、暁人の胸を軽く蹴る。
暁人は少しも怒らずに、慌てて謝る。
「…ご、ごめんね、薫…」
「いいから、早く靴紐を結んでよ。…泉が呼びに来ちゃうよ」
偉そうに命令しても暁人はどこか嬉しそうだ。
「そうだ。急がなきゃ…皆様、お待ちかねだよ…」
…皆様…か…。
「…暁人のご両親と、北白川伯爵家の梨央様と綾香様と…それから暁叔父様だろう?
…別にしょっちゅうお会いしている方々じゃないか…。そんなに畏らなくても良くない?」
薫はうんざりしたように溜息を吐く。
最近、益々人嫌いになった薫は大人達の集まりが大の苦手だ。
…今日は家が開いた親しい人達だけのガーデンパーティーなんだから…僕が行かなくてもいいんじゃないだろうか…。
薫はサボる口実を考え始めていた。
そんな薫を見透かしたように暁人が頑として告げた。
「ダメだよ、サボるのは。…僕、光小母さまに頼まれたんだ。薫がきっと仮病を使ってボイコットするかも知れないから、必ず連れて来てね…て…」
薫は再び舌打ちをした。
行儀の悪い行為に、暁人が眉をしかめる。
暁人は常に紳士のように振る舞う。
だから薫の行儀の悪さをいつも嘆いているのだ。
「…お母様め…!お見通しか…」
「…暁小父様も心配していたよ…?薫は体調が良くないのかな…て…」
薫の貌がぱっと明るくなる。
「暁叔父様が?…ほんと?」
…薫の父、礼也の弟 暁を薫は大好きだった。
気難し屋で大人嫌いな薫が唯一無邪気に懐いているのは、暁だった。
暁は眼を見張るような美貌の持ち主で、小さな頃から薫をとても可愛がってくれている。
大変な美男子で縣商会という縣財閥の系列会社の社長で、知的で上品。乗馬の名手で、趣味も幅広い。
穏やかな性格で誰にでも優しい。
三十を幾つか過ぎている筈だが、見た目は驚くほどに若々しく二十代半ば位にしか見えない。
社交界でも常に人気があり、暁が出席する夜会は未だに未婚の令嬢が殺到するらしい。
…けれど不思議なことに、彼はまだ独身だ。
器用に靴下を履かせてやりながら、どこかうっとりしたような口調で呟く。
「…薫の脚は白くてほっそりとしていて…綺麗だな…」
暁人の手がおずおずと脹脛を撫でた。
「くすぐったいってば‼︎」
薫の靴先が、暁人の胸を軽く蹴る。
暁人は少しも怒らずに、慌てて謝る。
「…ご、ごめんね、薫…」
「いいから、早く靴紐を結んでよ。…泉が呼びに来ちゃうよ」
偉そうに命令しても暁人はどこか嬉しそうだ。
「そうだ。急がなきゃ…皆様、お待ちかねだよ…」
…皆様…か…。
「…暁人のご両親と、北白川伯爵家の梨央様と綾香様と…それから暁叔父様だろう?
…別にしょっちゅうお会いしている方々じゃないか…。そんなに畏らなくても良くない?」
薫はうんざりしたように溜息を吐く。
最近、益々人嫌いになった薫は大人達の集まりが大の苦手だ。
…今日は家が開いた親しい人達だけのガーデンパーティーなんだから…僕が行かなくてもいいんじゃないだろうか…。
薫はサボる口実を考え始めていた。
そんな薫を見透かしたように暁人が頑として告げた。
「ダメだよ、サボるのは。…僕、光小母さまに頼まれたんだ。薫がきっと仮病を使ってボイコットするかも知れないから、必ず連れて来てね…て…」
薫は再び舌打ちをした。
行儀の悪い行為に、暁人が眉をしかめる。
暁人は常に紳士のように振る舞う。
だから薫の行儀の悪さをいつも嘆いているのだ。
「…お母様め…!お見通しか…」
「…暁小父様も心配していたよ…?薫は体調が良くないのかな…て…」
薫の貌がぱっと明るくなる。
「暁叔父様が?…ほんと?」
…薫の父、礼也の弟 暁を薫は大好きだった。
気難し屋で大人嫌いな薫が唯一無邪気に懐いているのは、暁だった。
暁は眼を見張るような美貌の持ち主で、小さな頃から薫をとても可愛がってくれている。
大変な美男子で縣商会という縣財閥の系列会社の社長で、知的で上品。乗馬の名手で、趣味も幅広い。
穏やかな性格で誰にでも優しい。
三十を幾つか過ぎている筈だが、見た目は驚くほどに若々しく二十代半ば位にしか見えない。
社交界でも常に人気があり、暁が出席する夜会は未だに未婚の令嬢が殺到するらしい。
…けれど不思議なことに、彼はまだ独身だ。