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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
ガーデンパーティー会場は楡の木が生い茂る木陰のもとに設置されていた。
広い円卓テーブルの頭上には綺麗な麻の布の天蓋が掛けられ、それを4本の支柱が支えている。
周りには夏にしか咲かない美しいイングリッシュローズが取り囲み、甘い薔薇の香気が辺りに漂いロマンチックな雰囲気を醸し出していた。
近くには噴水があるので、そのせせらぎの音が涼やかだ。
夏でも心地よく爽やかなこの場所で、パーティーは優雅に始まった。
…暁に連れられ、薫と暁人が現れた時には、客人達は一様に目を見張った。
最初に口を切ったのは暁人の父、大紋春馬であった。
「…薫くん…益々暁に似てきたな…」
しみじみと…しかしどこか熱を感じる口調に薫は少し違和感を覚えた。
「…そうですか…。兄さんにも、義姉さんにも似ていますよ…」
暁がやや困ったように微笑った。
「僕は暁叔父様似の方がいい!」
暁の腕にぎゅっとしがみつく薫に、父の礼也は朗らかに笑っただけだったが、母の光はその美しい眉を顰め、少し強い口調で諌めた。
「…パーティーに遅れたお詫びがまだよね…?薫。皆様をこんなにお待たせして…暁人くんや暁さんにまでご迷惑をお掛けして…」
…またお説教だ。本当に口うるさいったらないんだから…。
薫はわざと聞こえるように溜息を吐いた。
光の美しい瞳がきらりと光った。
「薫!」
傍らの暁が薫の頭を撫でながら、優しくとりなした。
「今、謝ろうとしていたんだよね?薫?」
暁は穏やかに諭すような眼差しをしていた。
薫は渋々、仏頂面のまま頭を下げた。
「…遅れて申し訳ありませんでした…」
北白川伯爵家の姉、綾香が明るく笑う。
「スターは最後に登場するのよね?薫くん」
皆が一斉に笑う。
空気が和やかになったところに、真っ白なふわふわのドレスを着た小さな女の子がぱたぱたと駆け寄り、薫に抱きついた。
「おにいちゃま、おそい!菫、おなかすいちゃった‼︎」
一同はその愛らしさに笑い声を上げた。
さすがの薫も破顔しながら、この年の離れた妹を抱き上げる。
「ごめんね、菫。お待たせ」
菫は今年、3歳になる。
薫を生んだのち、なかなか二人目に恵まれなかった両親の元に9年ぶりに授かった待望の一人娘だ。
両親は目の中に入れても痛くないほどに可愛がっている。
礼也は目尻を下げて、手招きする。
「菫、お父様の所においで」
菫は笑顔で父の元に駆け出した。
広い円卓テーブルの頭上には綺麗な麻の布の天蓋が掛けられ、それを4本の支柱が支えている。
周りには夏にしか咲かない美しいイングリッシュローズが取り囲み、甘い薔薇の香気が辺りに漂いロマンチックな雰囲気を醸し出していた。
近くには噴水があるので、そのせせらぎの音が涼やかだ。
夏でも心地よく爽やかなこの場所で、パーティーは優雅に始まった。
…暁に連れられ、薫と暁人が現れた時には、客人達は一様に目を見張った。
最初に口を切ったのは暁人の父、大紋春馬であった。
「…薫くん…益々暁に似てきたな…」
しみじみと…しかしどこか熱を感じる口調に薫は少し違和感を覚えた。
「…そうですか…。兄さんにも、義姉さんにも似ていますよ…」
暁がやや困ったように微笑った。
「僕は暁叔父様似の方がいい!」
暁の腕にぎゅっとしがみつく薫に、父の礼也は朗らかに笑っただけだったが、母の光はその美しい眉を顰め、少し強い口調で諌めた。
「…パーティーに遅れたお詫びがまだよね…?薫。皆様をこんなにお待たせして…暁人くんや暁さんにまでご迷惑をお掛けして…」
…またお説教だ。本当に口うるさいったらないんだから…。
薫はわざと聞こえるように溜息を吐いた。
光の美しい瞳がきらりと光った。
「薫!」
傍らの暁が薫の頭を撫でながら、優しくとりなした。
「今、謝ろうとしていたんだよね?薫?」
暁は穏やかに諭すような眼差しをしていた。
薫は渋々、仏頂面のまま頭を下げた。
「…遅れて申し訳ありませんでした…」
北白川伯爵家の姉、綾香が明るく笑う。
「スターは最後に登場するのよね?薫くん」
皆が一斉に笑う。
空気が和やかになったところに、真っ白なふわふわのドレスを着た小さな女の子がぱたぱたと駆け寄り、薫に抱きついた。
「おにいちゃま、おそい!菫、おなかすいちゃった‼︎」
一同はその愛らしさに笑い声を上げた。
さすがの薫も破顔しながら、この年の離れた妹を抱き上げる。
「ごめんね、菫。お待たせ」
菫は今年、3歳になる。
薫を生んだのち、なかなか二人目に恵まれなかった両親の元に9年ぶりに授かった待望の一人娘だ。
両親は目の中に入れても痛くないほどに可愛がっている。
礼也は目尻を下げて、手招きする。
「菫、お父様の所においで」
菫は笑顔で父の元に駆け出した。