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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
当時、風間は亡くなった兄嫁で未亡人だった百合子を密かに愛していた。
しかし、百合子の実家の継母が彼女を新興成金の後妻に送り込むことを目論んでおり、風間の両親もまた、亡き息子の忘れ形見だけを手元に引き取り、百合子を厄介払いしようと裏で結託していたのだ。
風間は実家に連れ去られた百合子の息子の司を奪い返し、百合子と共に暁の手引きの元、縣邸に匿われ暁の部下に護衛され、フランスへと駆け落ちをしたのだ。

「…あの時は兄さんに助けてもらいました」
暁が礼也に感謝の眼差しを送ると、礼也は懐かしそうに笑った。
「…懐かしいな…。あの日以来、ホールのフェンシングの剣は振るえていないなあ」
ユーモアたっぷりに呟くと、菫が目を丸くして叫んだ。
「おとうちゃま、戦ったの?騎士みたいに?」
「ああ、そうだよ。おとうちゃまはあの剣を翻して、悪者をばったばったとなぎ倒したのさ!」
高い高いをしてやると菫は歓声をあげて喜んだ。

微笑ましい光景に暁は目を細める。

…風間百合子は、以前と少しも変わらない…いや、あの頃よりも明るく洗練された美貌が光り輝くようなレディだった。
百合子は洋裁の腕とセンスを活かし、パリのシャンゼリゼ通りで子供服の店を開いていた。
彼女は美しいだけでなく、強く賢く視野の広い素晴らしい女性だった。

「ようこそお越し下さいました。暁様。お会いしたかったですわ」
西洋式に膝を折り、優雅に挨拶した百合子の傍らには、彼女に良く似た美しい面差しの少女が母親のスカートを恥ずかしそうに握り締め、佇んでいた。
「…漸く授かった娘の瑠璃子だ。6歳になる。
瑠璃子、ムッシュー・アガタにご挨拶しなさい」
瑠璃子ははにかみながらも、小さな声できちんと挨拶をした。
菫色のスカートを摘みお辞儀する様は、思わず笑みがこぼれるような愛らしさだ。

「…初めまして。ムッシュー、お会いできて嬉しいです」
暁は身を屈め、小さな可愛らしい手を握り締めた。
「初めまして。マドモアゼル、こちらこそお会いできて光栄です」

暁は風間を見上げ、微笑んだ。
「素晴らしいご家族ですね。先輩がお幸せそうで本当に良かった…」
…あの日、必死で守った三人の命がこんなにも豊かに花開き、また美しく小さな花が咲いていたことが何より嬉しかった。
「全ては君のお陰だ、暁。ありがとう…」
風間は感謝と愛を込めて、暁を抱擁した。


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