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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
風間の話がひとしきり盛り上がった後、大紋絢子が控えめに暁に話しかけた。
「…あの…暁様。…少しよろしいでしょうか…」
絢子が暁に話しかけてくることはとても珍しい。
絢子はいつも夫の陰に隠れるようにして、控えめに押し黙っていることが多いからだ。
「はい。なんでしょうか?」
暁は和かな微笑みを浮かべ、絢子を見た。

絢子はおずおずと口を開いた。
「実は…私の母の友人の嵯峨侯爵の末のお嬢様、笙子様が先日の夜会で暁様と踊っていただいたそうで…大変お喜びになられておられました」
…嵯峨侯爵の娘…余り記憶にはないが、先日の夜会といえば、三ヶ月前に開かれたイタリア大使館の舞踏会だろう。
乞われるままに何人かの令嬢と踊った。
その中の一人に違いない。
「…そうですか。…それは恐縮です」
「…それで…あの…笙子様は暁様にすっかり恋をしておしまいになったそうで…私が暁様とお知り合いだと分かると、何とか笙子様とのご縁談のお話を暁様にお勧めしては頂けないかと、お願いされたのです…」

暁は息を呑んだ。
…皮肉なものだ。
絢子さんに縁談を勧められる日が来るとは思わなかった…。
それが、暁の本音だった。
しかし、仕方のないことだ。
暁が同性愛者で、月城と恋人同士だということを勿論絢子は知らないのだから。

暁は敢えて明るく笑い、冗談交じりに答えた。
「…ありがたいお話ですが、あのお嬢様はまだ十代の筈…。私はもう三十半ばです。お相手には相応しくありません。もっとお若くて溌剌とした青年の方がお似合いでしょう」

大人しい絢子が珍しく引き下がらなかった。
「…でも…笙子様は毎日、暁様のことを思っておられるのだそうです。とても真剣に思い悩んでいらっしゃると聞いて私は…」
絢子の気持ちを傷付けずに、何と断ろうかと暁が思いあぐねていると、不意に驚く程に厳しい大紋の声が飛んだ。
「…よしなさい、絢子。お節介が過ぎるぞ」
普段、決してそのように強い口調で…しかも人前で妻を叱ることなどない大紋だ。

一同は目を見張り、暁人は驚きフォークを置いた。
薫も目を丸くする。
…大紋の小父様…いつも小母様にとてもお優しいのに…。

絢子がはっと肩を震わせる。
絢子もまたこのように厳しく夫に叱責されたことは初めてだったのだ。


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