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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
暁が、その場の空気を和ませるように朗らかに、大紋に声をかける。
「春馬さん、絢子さんは悪くありませんよ。絢子さんはお話を伝えて下さっただけです。気にかけていただいて、ありがたいと思っております。
僕が不甲斐ないばかりに…申し訳ありません」
わざとおどけて頭を下げる。
「…暁…」
大紋が何か言いたげに口を開いたが、ふと諦めて唇を引き結ぶ。
そして、暁は優しく絢子に詫びる。
「絢子さん、ありがとうございます。絢子さんのお気持ちも笙子さんのお気持ちもとても嬉しいです。
…けれど、僕は一生結婚しないと決めたのです。
これは僕の我儘です。…こんな我儘で自分勝手な男より、他に素晴らしいお相手はたくさんいらっしゃる筈です。
…笙子さんにお伝えください。…笙子さんのお幸せな結婚を心から願っています…と…」
暁の慈しみに満ちた微笑みを受け、絢子は涙ぐむ。
「…暁様…あの…申し訳ありません…」

大紋も、公衆の面前で妻を叱責したことを悔やみ、労わるように絢子の手を握り締めた。
「…すまない、絢子。…強く言いすぎた…。君の善意から出たことなのに…」
絢子の小さな手が震える。
「…いいえ…いいえ…私の方こそ…」
後は涙になり言葉にならない絢子に、光がわざと感心したように艶っぽい声を上げる。
「…声を荒げた春馬さんて、なんだか素敵…!普段穏やかでお優しいところしか拝見していないせいかしら。
…私、ちょっとドキドキしちゃったわ…」
光らしい艶めいたジョークに皆から笑いが起こる。
礼也が妻のジョークに乗ってやり、慌てる振りをする。
「おいおい、春馬によろめかないでくれよ?…それこそホールのフェンシングで決闘する羽目になる」
縣夫妻の寛大な優しさに感謝し、絢子も小さく笑ってみせる。
大紋も絢子の手を握り締めたまま、いつものように穏やかに微笑みかけた。

…漸く場が和みほっとした時…。
暁の背後から、聞き覚えのある低い美声が、静かに響いた。
「…失礼いたします。…梨央様、楽譜をお持ちいたしました」
反射的に振り返る。
夏の午後の陽光が背の高い男の美しいシルエットをくっきりと浮き上がらせる。
…逢いたかった…誰よりも愛しい男がそこにいた。
二人は一瞬だが、永遠のように見つめ合う。

「月城…!ありがとう。…この後、サロンでお姉様がお唄いになる楽譜を私ったら忘れてしまったの」
無邪気に梨央が笑った。

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