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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「お食事の後はサロンに移っていただきますわ。…綾香さんがミラノ帰りのお唄をご披露して下さるそうですの」
光が楽しげに皆に伝える。
「梨央さんがピアノで伴奏して下さるの。とても素敵なミュージックサロンになるわ」

北白川伯爵の長女綾香は最近ミラノ国立ヴェルディ音楽院での2年間の声楽留学を終え、帰国したばかりだ。
もちろん、妹の梨央も一緒だ。
彼女は個人のピアノの教師に付いて研鑽を積んだのだが、元々巧みだったピアノの腕は更に上がった。
綾香は音楽院で優秀な成績を納め、イタリア国内の数々の名門歌劇場からオファーがあったのだが、それらを全て断り梨央と帰国した。

今は慈善事業の仕事を中心に活躍し、昔唄っていた浅草のオペラカフェで月に一度、変わらぬペースでステージに立っている。
綾香が舞台に立つとチケットは全て完売し、浅草カフェも古くからのファンと噂を聞きつけた客とで相変わらずの大盛況だ。
「…折角名門の音楽院に留学なさって、オファーも沢山あったのに、あっさりご帰国なさって…。
しかも、慈善事業とあの浅草カフェのお仕事のみなんて…。綾香さんは本当に欲がないわ」
光は肩を竦める。
綾香は妖艶に笑う。
「私は好きな唄が歌えるなら、どこでもいいの。…それより愛する人との時間を大切にしたいわ」
さりげなく隣りの梨央の手を握りしめる。
梨央は透き通るような頬を薔薇色に染めた。

…梨央様も綾香様も昔からちっともお変わりないな…。
北白川のお家はなんだか不思議なお家だ。

薫は二人の…謎に包まれたお伽話めいた関係をいつも不思議に…しかしどこか憧れに似た気持ちで眺めていた。
生々しいものや醜いものと無縁な美しい姉妹に憧憬の思慕を持ったのかもしれない。

現実離れしたような美しい姉妹をうっとり眺めていると、北白川家の美貌の執事が暁のテーブルの下にしなやかに屈み、何かを手渡した。
「…暁様、落とし物です…」
月城の白手袋に包まれた手が暁の白く美しい手に触れる。
「…ありがとう…月城…」
銀のナプキンリングらしきものを手渡した月城はそのまま一繋ぎの動作でさりげなく暁の手を握り締めた。
暁の華奢な手が細かく震えた。
その美しい目元が朱に染まる。
潤んだ黒い瞳が月城を見上げるのを、薫はなぜだか見てはならないものを見たような気がし…しかし目を逸らすことは出来ずにそっと見つめ続けていたのだった。


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