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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
屋敷の裏庭は夏でもひんやりとしていて、とても過ごしやすい。
日陰でも育つハーブ畑があり、綺麗に刈り込んである芝生の奥は楠木が生い茂り、ちょっとした林のようになっている。
静かで人が殆どこない裏庭は、薫とカイザーの絶好の遊び場だ。
光と口喧嘩して不貞腐れたときは、薫は必ずカイザーを連れてここに来る。
小さな東屋のベンチに座り、階下のキッチンからくすねて来たスコーンやクッキーをカイザーと分け合って食べると、自分がまるで惨めな家なし子のような気分になった。
…もっとも、大抵はあっという間に泉が探しに飛んで来るのだが…。

「さあ、カイザー!取って来い!」
薫はハーブ畑に向ってボールを投げた。
カイザーは目を輝かせながら、ボールを取りに行く。
カイザーはボール投げが大好きだ。

…だが、あまり頭が良くないカイザーは走っている内に目的を見失うのだ。

…なかなか帰ってこない…。
薫は眉を顰めた。
立ち上がり、カイザーが駆けて行った方を見る。

…やっぱりだ…。
カイザーはボールではなく、ひらひらと飛んでいる揚羽蝶を追いかけ裏庭を超え、離れの小径へと駆けてゆくところであった。
カイザーはなぜか揚羽蝶が大好きなのだ。

薫は溜息を吐いた。
「…だからお母様に馬鹿犬呼ばわりされるんだよ…」

「…カイザーの兄弟はドイツ公使邸で立派な番犬になっているそうなのに…。この子は全く…」
以前、揚羽蝶を追いかけて行方不明になった時、下僕に探し出されたカイザーを見て、光が呆れたように肩を竦めたのだ。
馬鹿にされているのに、カイザーは嬉しそうに舌を出して光を見上げていたのも切なかった。

…また行方不明になってお母様に馬鹿にされる前に探さなきゃ…。
薫は離れの小径へと脚を踏み出した。
「…カイザー…」

…薫の脚がふと止まった。

楠木の木陰に、不意に二人の人影が現れたからだ。
…反射的に薫は近くの東屋に駆け込んだ。
そしてその影から様子を伺った。

…誰だろう…。
背が高い人…あれは…
…北白川伯爵家の執事で、泉の兄の月城だ。
…そして、もう一人は…
薫は目を凝らした。
「…暁叔父様だ…!」

…二人で何をしているんだろう…。
雰囲気や二人の周りの温度が普通とは違う。

…すると…
…二人はゆっくりと近づき見つめ合い、そのまま抱き合い…唇を重ねた。
薫ははっと息を呑み、眼を見開いた。



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