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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「…薫様!お探ししていましたよ」
泉が屋敷の方から颯爽とこちらに向かって来る。
…遠くから見ると泉はすらりと背が高く、プロポーションが西洋人のようで姿が良い。
薫と暁人は急いで駆け寄り、泉の前に立ちはだかるようにする。

泉が二人が来た東屋の方を見ながら、無邪気に笑う。
「…お二人でかくれんぼ…ですか?」
「…ま、まあそんなところ…ね?暁人」
「…う、うん。そう…」
暁人も話を合わせた。
泉の足元にはカイザーがぴたりと寄り添っていた。
「…カイザー…お前、なんでここにいるんだよ…」
薫は溜息を吐いた。
泉がカイザーの首筋を優しく撫でる。
「私が薫様達をお探ししていたら、カイザーがこっちだと教えてくれたのですよ」
カイザーが得意げに高らかに吠えた。
…本当かなあ…。全く…馬鹿なんだか利口なんだか良く分からない奴だ…。
そう思いながらも、薫は屈み込みカイザーの鼻先に貌を付ける。
「…お前、蝶はどうしたんだよ…?」
カイザーは嬉しそうに薫の頬をぺろぺろと舐めた。
「くすぐったいよ、カイザー!」
薫が思わず小さく笑う。
…やっぱり、馬鹿でもカイザーは可愛い…。

泉が爽やかな声で薫と暁人を促す。
「さあ、お二人とも。…もう間もなく綾香様のお唄が始まりますよ。…サロンの方にお越しください」
薫は泉を見上げる。
…眼鏡がないだけで、泉は月城にそっくりだ。
…暁叔父様にキスをしていた月城と…。

先ほどの白昼夢のような光景が蘇り、薫は慌てて首を振る。
「う、うん。行くよ…。あ、菫は?」
暁人に聞くと
「噴水の水に濡れたから、ナニーが着替えをさせている」
と、まだ上気した眼で答えた。

泉が薫達より前を歩いているのを確認し、暁人にそっと囁く。
「…さっきのことは、絶対に秘密だからな」
暁人がすぐさま頷く。
「うん!勿論だよ」
暁人のことは信用出来るとは思っているが、薫は念の為にもう一度囁いた。
「…僕と暁人と、二人だけの秘密だ…」
不意に暁人の瞳が嬉しそうに…熱っぽく輝いた。
薫の貌を見つめながら力強く頷いた。
「…二人だけの…秘密…だね」
「そうさ…」
…暁叔父様の秘密は絶対守らなきゃ…。

薫は歩きながらそっと、背後の楠木を振り返った。

…そこにはもはや、誰の姿も見当たらなかった…。

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