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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

昼食が済むと、暁は絢子に薫のことを呉々も頼み、大紋家を辞した。
別れ際に、薫を抱きしめながら少し真面目に告げる。
「薫、いい子にしているんだよ。暁人くんと仲良くして、絢子さんや春馬さんの言うことをよく聞くんだよ。
宿題は早めに済ませること。好き嫌いや我儘は言わないこと。兄さんも来週には九州からお帰りになるからね。…私もまた、顔を見にくるから」
薫は素直に頷いた。
「わかった。…ねえ叔父様、カイザーをよろしくね。あいつ、寂しがり屋だから、夜は暁叔父様の部屋で寝かせてあげてくれないかな?」
カイザーの心配をする優しい薫だ。
…僕にはこんなに良い子なのに、なぜ義姉さんとはそりが合わないだろうか…。
少し不憫になる。
「わかったよ。カイザーのことは任せておきなさい」
薫は漸くほっとしたような笑顔になった。
玄関まで、大紋が送りに来た。
「晩餐も食べていけばいいのに…」
名残惜しげな眼差しに微笑み返す。
「…ありがとうございます。…残念ですが、夜に約束がありまして…」
鋭く大紋が口を開く。
「…彼?…もうこちらに来ているの?」
暁は少し困ったように微笑んだ。
「…ええ。昨日から…」
「そうか…それは良かったね。…東京では君達は余りゆっくり会えないだろうから…」
優しく喜んで見せながらも、大紋の表情には寂しげな色が浮かんでいた。
「…月城とは、上手くいっているんだね…」
酷だと思いながらも、静かに頷く。
「…はい。とても…」
「そう…。それは良かった…」
優しく微笑ってくれた貌は、昔と少しも変わらない大紋で、暁はやはり少し切なくなる。
「…では、失礼します。薫をよろしくお願いします」
そう述べて玄関を出ようとした暁の手を、大紋が握りしめる。
驚いて振り返る暁に、
「…暁、また来てくれ。…友人としてだ。君とまた遠乗りがしたい。…暁人や薫くんももちろん一緒だ。…それなら構わないだろう?」
真剣な眼差しで囁いた。
少し躊躇したが、
「…ええ、子ども達と一緒なら…」
と伏し目がちに答える。
「良かった。…ありがとう。楽しみにしているよ…」
無邪気に喜ぶ大紋に、
「…では、失礼します」
一礼し、玄関を出た。
メルセデスに乗り込み窓の外を見る。
大紋はやはり見送りに出ていた。
暁に微笑みながら手を振る。
…この人を嫌いになれたら…どんなにか…。
暁は再びこの言葉を呟き、眼を閉じた。
別れ際に、薫を抱きしめながら少し真面目に告げる。
「薫、いい子にしているんだよ。暁人くんと仲良くして、絢子さんや春馬さんの言うことをよく聞くんだよ。
宿題は早めに済ませること。好き嫌いや我儘は言わないこと。兄さんも来週には九州からお帰りになるからね。…私もまた、顔を見にくるから」
薫は素直に頷いた。
「わかった。…ねえ叔父様、カイザーをよろしくね。あいつ、寂しがり屋だから、夜は暁叔父様の部屋で寝かせてあげてくれないかな?」
カイザーの心配をする優しい薫だ。
…僕にはこんなに良い子なのに、なぜ義姉さんとはそりが合わないだろうか…。
少し不憫になる。
「わかったよ。カイザーのことは任せておきなさい」
薫は漸くほっとしたような笑顔になった。
玄関まで、大紋が送りに来た。
「晩餐も食べていけばいいのに…」
名残惜しげな眼差しに微笑み返す。
「…ありがとうございます。…残念ですが、夜に約束がありまして…」
鋭く大紋が口を開く。
「…彼?…もうこちらに来ているの?」
暁は少し困ったように微笑んだ。
「…ええ。昨日から…」
「そうか…それは良かったね。…東京では君達は余りゆっくり会えないだろうから…」
優しく喜んで見せながらも、大紋の表情には寂しげな色が浮かんでいた。
「…月城とは、上手くいっているんだね…」
酷だと思いながらも、静かに頷く。
「…はい。とても…」
「そう…。それは良かった…」
優しく微笑ってくれた貌は、昔と少しも変わらない大紋で、暁はやはり少し切なくなる。
「…では、失礼します。薫をよろしくお願いします」
そう述べて玄関を出ようとした暁の手を、大紋が握りしめる。
驚いて振り返る暁に、
「…暁、また来てくれ。…友人としてだ。君とまた遠乗りがしたい。…暁人や薫くんももちろん一緒だ。…それなら構わないだろう?」
真剣な眼差しで囁いた。
少し躊躇したが、
「…ええ、子ども達と一緒なら…」
と伏し目がちに答える。
「良かった。…ありがとう。楽しみにしているよ…」
無邪気に喜ぶ大紋に、
「…では、失礼します」
一礼し、玄関を出た。
メルセデスに乗り込み窓の外を見る。
大紋はやはり見送りに出ていた。
暁に微笑みながら手を振る。
…この人を嫌いになれたら…どんなにか…。
暁は再びこの言葉を呟き、眼を閉じた。

