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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

月の光が夢のように、闇色を湛える小さな湖を照らしていた。
小径を静かに急ぎながら暁は、カンテラを掲げた。
仄かな光が湖の畔にあるボート小屋を照らし…そこに誰よりも愛おしい男のシルエットを浮かび上がらせた。
暁は思わず喜びから叫んだ。
「…月城…!」
男はこちらを振り向き、その端正な貌で微笑んだ。
暁はカンテラをその場に置き、少年のように走り出した。
月の光を浴びながら小径をひた走り、愛する男の胸に飛び込む。
「月城!逢いたかった!」
月城の胸からは水仙の薫りが漂い、暁を幸福感が押し包む。
「…暁様…!私もです…」
男の優しい腕に強く抱きしめられる。
すぐにそのひんやりとした大きな美しい手で暁の小さな貌は覆われ、上向きにさせられる。
月城の端正な眼鏡の奥の瞳は、静かな情熱と愛を湛えていて、暁は思わず自分から男にくちづけをした。
「…月城…好き…大好き…」
更に愛を囁こうとする暁の美しい唇は、月城の巧みなくちづけに絡めとられる。
「…ん…あ…ああ…っ…」
「…暁様…愛しています…」
角度を変えながらの深いくちづけになる。
暁はその甘く優しいくちづけに酔いしれる。
月城がゆっくりと唇を離し、吐息が触れ合う距離で微笑う。
「…お待ちしておりました。…さあ…」
美しい手が差し伸べられた先には、射干玉の色に漣めく湖に浮かべられたボートがあった。
月城に手を引かれ、桟橋からボートに乗り込む。
ボートの中には、純白の柔らかな敷布と、純白の羽根枕が敷かれていた。
…まるで結婚式の船出みたいだ…。
暁の胸が締め付けられ、そんな乙女のようなことを考えた自分に頬が赤らむ。
…この小さな湖は北白川伯爵家が所有する敷地内にある。
従って、ボートもボート小屋も北白川家の者しか使用しない。
他の者は決して近づけないようになっている。
…なぜならそれらの管理は全て月城に任されているからだ。
…絶好の逢引の場所ですよ…。
月城がいつか愛の営みの最中にそう微笑ったのだ。
…月の光に輝く湖の漣が夢のように綺麗なのです。
…そう…いつか行ってみたいな…君と…。
…いつか…でいいんだ…。
遠慮勝ちに呟く暁に
…必ず、お連れします…暁様…。
月城は暁の唇を奪いながら、熱く囁いた。
…必ず…暁様…。
…月城は約束を守ってくれた。
暁は月城の優しいひんやりとした手を握りしめ、そっと涙ぐむ。
小径を静かに急ぎながら暁は、カンテラを掲げた。
仄かな光が湖の畔にあるボート小屋を照らし…そこに誰よりも愛おしい男のシルエットを浮かび上がらせた。
暁は思わず喜びから叫んだ。
「…月城…!」
男はこちらを振り向き、その端正な貌で微笑んだ。
暁はカンテラをその場に置き、少年のように走り出した。
月の光を浴びながら小径をひた走り、愛する男の胸に飛び込む。
「月城!逢いたかった!」
月城の胸からは水仙の薫りが漂い、暁を幸福感が押し包む。
「…暁様…!私もです…」
男の優しい腕に強く抱きしめられる。
すぐにそのひんやりとした大きな美しい手で暁の小さな貌は覆われ、上向きにさせられる。
月城の端正な眼鏡の奥の瞳は、静かな情熱と愛を湛えていて、暁は思わず自分から男にくちづけをした。
「…月城…好き…大好き…」
更に愛を囁こうとする暁の美しい唇は、月城の巧みなくちづけに絡めとられる。
「…ん…あ…ああ…っ…」
「…暁様…愛しています…」
角度を変えながらの深いくちづけになる。
暁はその甘く優しいくちづけに酔いしれる。
月城がゆっくりと唇を離し、吐息が触れ合う距離で微笑う。
「…お待ちしておりました。…さあ…」
美しい手が差し伸べられた先には、射干玉の色に漣めく湖に浮かべられたボートがあった。
月城に手を引かれ、桟橋からボートに乗り込む。
ボートの中には、純白の柔らかな敷布と、純白の羽根枕が敷かれていた。
…まるで結婚式の船出みたいだ…。
暁の胸が締め付けられ、そんな乙女のようなことを考えた自分に頬が赤らむ。
…この小さな湖は北白川伯爵家が所有する敷地内にある。
従って、ボートもボート小屋も北白川家の者しか使用しない。
他の者は決して近づけないようになっている。
…なぜならそれらの管理は全て月城に任されているからだ。
…絶好の逢引の場所ですよ…。
月城がいつか愛の営みの最中にそう微笑ったのだ。
…月の光に輝く湖の漣が夢のように綺麗なのです。
…そう…いつか行ってみたいな…君と…。
…いつか…でいいんだ…。
遠慮勝ちに呟く暁に
…必ず、お連れします…暁様…。
月城は暁の唇を奪いながら、熱く囁いた。
…必ず…暁様…。
…月城は約束を守ってくれた。
暁は月城の優しいひんやりとした手を握りしめ、そっと涙ぐむ。

