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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

晩餐の後は遊戯室で大紋と暁人と薫の三人で遊んだ。
スコットランドヤードやトランプゲームで遊んだ後、大紋はスイスの高級チョコレートをくれた。
「…食べなさい。男同志の秘密だよ」
と悪戯っぽくウィンクをした。
…子どもは夜にチョコレートは食べてはいけないと母やナニーに言われていた。
興奮して眠れなくなるからだそうだ。
暁人もそう言われているのだろう。大人びた彼には珍しく喜んだ。
「お母様に叱られない?」
「たまにはいいだろう。人生には毒な楽しみも必要さ」
戯けて笑う余裕に満ちた雰囲気は、父を彷彿させる。
だから薫は大紋が大好きだ。
薫は父が大好きだが、父は海外出張が多くてなかなか会えない。ましてや一緒にボードゲームで遊んで貰えることなど稀だ。
だから尚更、暁人が羨ましい。
「…暁人はいいなあ。優しいお母様と、遊んでくれるお父様がいて…」
何度繰り返したかわからない言葉を繰り返す。
「…礼也は忙しすぎるからな…。光さんは、ああ見えて優しい人なんだがね…」
慰めるように微笑む大紋に、薫は肩を竦めて見せた。
「まさか!…お母様は獅子より怖い人だ。…優しいのは菫に対してだけだよ。…ああ、絢子小母様がお母様なら良かったなあ」
膨れる薫を大紋が不意に抱き上げた。
視野が急に高くなる。
…叔父様は背もお父様くらいなんだな…。
シャツから漂う薫りも外国製のトワレで…父のようで薫は慕わしい気持ちになる。
「大きくなったな、薫くん」
愚痴ばかり言う薫の気持ちを変えさせるように明るく見つめる。
「暁人よりは小さいですよ」
暁人は学年一背が高い。薫は…辛うじて平均くらいだ。
「これから伸びるさ。…君は両親より、暁似だな…」
ダイニングで呟かれたことをまた口にする。
「よく言われます」
綺麗な叔父に似ていると言われるのは嬉しい。
「…僕が暁に初めて会ったのは彼が14歳の時だったが、とても痩せていて小柄でね。…多分、12歳の今の君くらいの身体つきだったかな…」
大紋は愛おしむように薫を見つめ、頬にそっと触れた。
「…君を見ていると、あの頃の暁を思い出すよ…」
優しい瞳の奥に切ないような色を読み取り、薫は少し不思議に思った。
ドアがそっとノックされ、絢子が貌を覗かせ微笑む。
「そろそろお寝みの時間ですよ」
大紋は薫を床に降ろし、頭を撫でて微笑んだ。
「…お寝み、薫くん。また明日会おう」
スコットランドヤードやトランプゲームで遊んだ後、大紋はスイスの高級チョコレートをくれた。
「…食べなさい。男同志の秘密だよ」
と悪戯っぽくウィンクをした。
…子どもは夜にチョコレートは食べてはいけないと母やナニーに言われていた。
興奮して眠れなくなるからだそうだ。
暁人もそう言われているのだろう。大人びた彼には珍しく喜んだ。
「お母様に叱られない?」
「たまにはいいだろう。人生には毒な楽しみも必要さ」
戯けて笑う余裕に満ちた雰囲気は、父を彷彿させる。
だから薫は大紋が大好きだ。
薫は父が大好きだが、父は海外出張が多くてなかなか会えない。ましてや一緒にボードゲームで遊んで貰えることなど稀だ。
だから尚更、暁人が羨ましい。
「…暁人はいいなあ。優しいお母様と、遊んでくれるお父様がいて…」
何度繰り返したかわからない言葉を繰り返す。
「…礼也は忙しすぎるからな…。光さんは、ああ見えて優しい人なんだがね…」
慰めるように微笑む大紋に、薫は肩を竦めて見せた。
「まさか!…お母様は獅子より怖い人だ。…優しいのは菫に対してだけだよ。…ああ、絢子小母様がお母様なら良かったなあ」
膨れる薫を大紋が不意に抱き上げた。
視野が急に高くなる。
…叔父様は背もお父様くらいなんだな…。
シャツから漂う薫りも外国製のトワレで…父のようで薫は慕わしい気持ちになる。
「大きくなったな、薫くん」
愚痴ばかり言う薫の気持ちを変えさせるように明るく見つめる。
「暁人よりは小さいですよ」
暁人は学年一背が高い。薫は…辛うじて平均くらいだ。
「これから伸びるさ。…君は両親より、暁似だな…」
ダイニングで呟かれたことをまた口にする。
「よく言われます」
綺麗な叔父に似ていると言われるのは嬉しい。
「…僕が暁に初めて会ったのは彼が14歳の時だったが、とても痩せていて小柄でね。…多分、12歳の今の君くらいの身体つきだったかな…」
大紋は愛おしむように薫を見つめ、頬にそっと触れた。
「…君を見ていると、あの頃の暁を思い出すよ…」
優しい瞳の奥に切ないような色を読み取り、薫は少し不思議に思った。
ドアがそっとノックされ、絢子が貌を覗かせ微笑む。
「そろそろお寝みの時間ですよ」
大紋は薫を床に降ろし、頭を撫でて微笑んだ。
「…お寝み、薫くん。また明日会おう」

