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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

暁人がおずおずと薫のベッドで寝てもいいかと、聞いてきた。
「いいよ。このベッド、すごく広いし」
ベッドのスペースを譲ってやる。
学校でのサマースクールや課外授業の宿泊では、皆で雑魚寝だ。
暁人とは小さな時からお互いの家を泊まり合っていたので、同じベッドで寝ることなんてザラだったのだ。
それに…折角浮き浮きと楽しい気持ちなのに、暁人が自分の部屋に帰るのは薫もなんだか寂しくなりそうで、素直に頷いたのだ。
暁人は嬉しそうに薫の隣に滑り込む。
一緒に横たわると、暁人の背の高さと身体の大きさが手に取るように分かる。
「暁人、また背が伸びた?身体も大きくなっちゃって…」
羨ましそうに見上げる薫に、暁人は穏やかに微笑む。
「薫もそのうち、伸びるよ。…て、いうか…僕は今の薫が好きだ…。綺麗で華奢で…すごく可愛い」
薫はむっとして暁人を押しやる。
「なんだよ、女の子扱いするな」
暁人は慌てる。
「ち、違うよ!僕は薫がすごく綺麗だ…て言いたかったんだ」
…暁人は年の割に大きな手で薫の肩を掴み、振り向かせる。
そしてうっとりしたように薫の貌を覗き込む。
「…白い肌、大きな澄んだ瞳、可愛い鼻、唇はつやつやしているし…薫は誰より可愛いし綺麗だ…」
薫はちらりと暁人を見遣る。
暁人はいつの間にか薫の信奉者になっていた。
だから、薫のことをいつも褒め称える。
綺麗だとか可愛いとかいい匂いがするとか…。
薫は男だからそんなことを熱心に言われても喜んだりしないけれど、悪い気はしない。
学年一の秀才でスポーツ万能…おまけに容姿端麗な人気者の暁人が、下僕のように薫に跪かんばかりに賛美するのを見聞きするのは気分がいいからだ。
…でも最近は、そんな暁人の眼差しが妙な熱を帯びていて、少し居心地が悪い。
だから薫は意地悪く暁人を遠ざけ、ツンと貌を背けた。
「ばか。そんな歯が浮くようなセリフは女の子に言え。…お前なら、よりどりみどりだろ?」
暫くして思いつめたような暁人の声が背後から聞こえた。
「…僕は…どんな女の子より薫の方が綺麗だと思う…」
「…ふうん…」
暁人の賛美には慣れている薫はわざと冷たい声で気のない相槌を打つ。
背中を向けたままだ。
横になり、窓から眺める月と星を眺めていると、不意に泉の貌が浮かんだ。
…泉…何しているかな…。
あの夜のキスが生々しく蘇り、薫の胸が甘く疼いた。
「いいよ。このベッド、すごく広いし」
ベッドのスペースを譲ってやる。
学校でのサマースクールや課外授業の宿泊では、皆で雑魚寝だ。
暁人とは小さな時からお互いの家を泊まり合っていたので、同じベッドで寝ることなんてザラだったのだ。
それに…折角浮き浮きと楽しい気持ちなのに、暁人が自分の部屋に帰るのは薫もなんだか寂しくなりそうで、素直に頷いたのだ。
暁人は嬉しそうに薫の隣に滑り込む。
一緒に横たわると、暁人の背の高さと身体の大きさが手に取るように分かる。
「暁人、また背が伸びた?身体も大きくなっちゃって…」
羨ましそうに見上げる薫に、暁人は穏やかに微笑む。
「薫もそのうち、伸びるよ。…て、いうか…僕は今の薫が好きだ…。綺麗で華奢で…すごく可愛い」
薫はむっとして暁人を押しやる。
「なんだよ、女の子扱いするな」
暁人は慌てる。
「ち、違うよ!僕は薫がすごく綺麗だ…て言いたかったんだ」
…暁人は年の割に大きな手で薫の肩を掴み、振り向かせる。
そしてうっとりしたように薫の貌を覗き込む。
「…白い肌、大きな澄んだ瞳、可愛い鼻、唇はつやつやしているし…薫は誰より可愛いし綺麗だ…」
薫はちらりと暁人を見遣る。
暁人はいつの間にか薫の信奉者になっていた。
だから、薫のことをいつも褒め称える。
綺麗だとか可愛いとかいい匂いがするとか…。
薫は男だからそんなことを熱心に言われても喜んだりしないけれど、悪い気はしない。
学年一の秀才でスポーツ万能…おまけに容姿端麗な人気者の暁人が、下僕のように薫に跪かんばかりに賛美するのを見聞きするのは気分がいいからだ。
…でも最近は、そんな暁人の眼差しが妙な熱を帯びていて、少し居心地が悪い。
だから薫は意地悪く暁人を遠ざけ、ツンと貌を背けた。
「ばか。そんな歯が浮くようなセリフは女の子に言え。…お前なら、よりどりみどりだろ?」
暫くして思いつめたような暁人の声が背後から聞こえた。
「…僕は…どんな女の子より薫の方が綺麗だと思う…」
「…ふうん…」
暁人の賛美には慣れている薫はわざと冷たい声で気のない相槌を打つ。
背中を向けたままだ。
横になり、窓から眺める月と星を眺めていると、不意に泉の貌が浮かんだ。
…泉…何しているかな…。
あの夜のキスが生々しく蘇り、薫の胸が甘く疼いた。

