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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
…泉…どうしているかな…。
泉の煙草の匂いと柑橘系のトワレの薫りが脳裏によぎる。
…泉は僕のことをどう思っているのかな…。
好き…なのかな…。
胸がどきどきする。
こんな気持ちは初めてだ。

「…ねえ、薫…」
背中越しに暁人の声が聞こえた。
その声があまりに弱々しかったのでさすがに可哀想になり、くるりと暁人の方を向いてやった。
「何?」
12歳とは思えない既に完成されたような端正な貌が、近くに迫っていて驚く。
暁人が緊張した口調で尋ねる。
「…あのさ…薫は、好きな人…いる?」
「…へ?」
「…好きな人、いるのかな…て思って…」
遠慮勝ちだが、その瞳からは強い意志を感じた。
「…別に…」
「いないの?鷹司さんは?」
「はあ?何言ってんの?」
生徒会執行部の鷹司紳一郎…。
上級生の中で、唯一気が合うというだけだ。
薫は肩を竦める。
「あの人はただの先輩だよ。…ていうか…男じゃないか」
…泉も男だけど…。
暁叔父様も男の月城とキスしてた…。
…と、言うことは…
暁叔父様と月城は恋人同士なんだろうか…。

今更ながらにそのことに気づかされ、暁の心臓はまた音を立て始める。
…そうか…。別に、女の子じゃなくてもいいんだ。
…僕は…男の人を好きになってもいいんだ…。

薫は女の子が苦手だった。
星南学院には女子部があり、年に何回か交流のダンスパーティが開かれる。
社交界デビュー前の女の子のプレ・舞踏会みたいなものだ。

そこでも薫は注目の的だった。
…西洋絵画から抜け出てきたような美しく繊細に整った美貌と佇まい…。
女の子達は勝手に薫を王子様扱いをする。
…迷惑この上ない。
実際の薫は口は悪いし、行儀も悪いし、気の利いた会話をするサービス精神もない愛想のない人間なのに。

…女の子…。うるさくて、やたらチラチラとこちらを見て、友達同士でひそひそ話をしてはくすくす笑って…。
それでいて、ダンスを申し込むと真っ赤になって目も合わさない…。
自意識過剰で、面倒くさい存在でしかなかった。

…別に女の子に恋しなくてもいいのか…。
目から鱗が落ちたように呆然とする薫に、暁人が声をかける。
「薫…?」
「…あ、ああ」
…そういえば、暁人の好きな人の話を聞いたことがなかったな…。
暁人を見上げて何気なく尋ねる。
「暁人は?好きな人はいるの?」

暁人の貌が見る見る内に朱に染まった。


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