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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

数日後、朝食を済ませた薫と暁人は広い庭で水遊びに興じていた。
大紋がアメリカから取り寄せたという水鉄砲は恐ろしくよく飛ぶ。
二人はずぶ濡れになりながら、歓声を上げて撃ち合う。
庭園の木陰のウッドチェアからそれを見ながら大紋は微笑む。
絢子は夫にレモネードを勧めながら、二人に眼を遣る。
「…暁人さん、本当に楽しそう…。やはり一人っ子だから普段は寂しいのかしら…」
妻の呟きに、大紋は大らかに答える。
「関係ないだろう。暁人ももう12だ。…兄弟を欲しがる年ではないよ」
「…でも…私は欲しいですわ…」
絢子が遠慮勝ちに夫を見上げる。
「…貴方の子供を…何人でも欲しいです…」
絢子の言葉に大紋は一瞬戸惑い…だがすぐに優しく微笑み、妻の白い手を握りしめる。
「僕は暁人と君がいれば満足だよ。…君は僕だけじゃ不満かな?」
戯けて妻の貌を覗き込む大紋に、絢子は困ったように笑う。
「…いいえ…。もちろん、満足ですわ…。私は幸せです。優しい旦那様と、可愛い子供に恵まれて…不満などひとつもありませんわ…」
「それは良かった。…僕は君が幸せならそれで良いのだ。…子供のことはもう忘れなさい。…僕たちには暁人という素晴らしい子供がいるのだから」
「…ええ…分かっておりますわ…」
寂しげに微笑むと、絢子はもうその話題を出さなかった。
…そして、再び歓声を上げて遊ぶ二人に目を転じ…
「…薫さんは、本当に暁様に良く似ていらっしゃいますわね…」
と、ひっそりと呟いた。
大紋は一瞬、瞬きをし妻を見る。
…が、すぐに二人に眼を遣り、のどかに答える。
「そうだね。…薫くんは叔父さんに似たんだな」
「…本当にお綺麗…。…まるで…暁様がそこに、いらっしゃるみたい…」
独り言のように密やかに呟く。
それは、聞いたことがないような寂しく…哀しげな声であった。
大紋は眉を寄せる。
…と、その時…家政婦が薫を呼びにやってきた。
「薫様、縣様の執事さんがお見えになっていますよ」
…執事の生田は東京だ。
軽井沢に来ている執事は…一人しかいない。
薫は気がつくと水鉄砲を放り出し、走り出していた。
「ま、待ってよ、薫!」
なぜか焦ったように暁人が後を追う。
大紋がアメリカから取り寄せたという水鉄砲は恐ろしくよく飛ぶ。
二人はずぶ濡れになりながら、歓声を上げて撃ち合う。
庭園の木陰のウッドチェアからそれを見ながら大紋は微笑む。
絢子は夫にレモネードを勧めながら、二人に眼を遣る。
「…暁人さん、本当に楽しそう…。やはり一人っ子だから普段は寂しいのかしら…」
妻の呟きに、大紋は大らかに答える。
「関係ないだろう。暁人ももう12だ。…兄弟を欲しがる年ではないよ」
「…でも…私は欲しいですわ…」
絢子が遠慮勝ちに夫を見上げる。
「…貴方の子供を…何人でも欲しいです…」
絢子の言葉に大紋は一瞬戸惑い…だがすぐに優しく微笑み、妻の白い手を握りしめる。
「僕は暁人と君がいれば満足だよ。…君は僕だけじゃ不満かな?」
戯けて妻の貌を覗き込む大紋に、絢子は困ったように笑う。
「…いいえ…。もちろん、満足ですわ…。私は幸せです。優しい旦那様と、可愛い子供に恵まれて…不満などひとつもありませんわ…」
「それは良かった。…僕は君が幸せならそれで良いのだ。…子供のことはもう忘れなさい。…僕たちには暁人という素晴らしい子供がいるのだから」
「…ええ…分かっておりますわ…」
寂しげに微笑むと、絢子はもうその話題を出さなかった。
…そして、再び歓声を上げて遊ぶ二人に目を転じ…
「…薫さんは、本当に暁様に良く似ていらっしゃいますわね…」
と、ひっそりと呟いた。
大紋は一瞬、瞬きをし妻を見る。
…が、すぐに二人に眼を遣り、のどかに答える。
「そうだね。…薫くんは叔父さんに似たんだな」
「…本当にお綺麗…。…まるで…暁様がそこに、いらっしゃるみたい…」
独り言のように密やかに呟く。
それは、聞いたことがないような寂しく…哀しげな声であった。
大紋は眉を寄せる。
…と、その時…家政婦が薫を呼びにやってきた。
「薫様、縣様の執事さんがお見えになっていますよ」
…執事の生田は東京だ。
軽井沢に来ている執事は…一人しかいない。
薫は気がつくと水鉄砲を放り出し、走り出していた。
「ま、待ってよ、薫!」
なぜか焦ったように暁人が後を追う。

