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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

暁人はベッドに放り出されたままのバイオリンを丁寧にしまってやる。
「うん。お母様は優しいよ」
「うちのメドゥーサのようなお母様とは正反対だ。…怒ったりもなさらないだろう?」
「そうだね。怒らないね。いつも優しい」
「いいなあ!…うちのお母様なんか、僕には怒ってばかりだ」
薫は広いベッドに飛び込みごろりと転がる。
…貴方はどうしてそんなに強情なの?どうして素直になれないの?また、ナイフの音を立てて!…汚れた指をテーブルクロスで拭いてはいけないと何度言ったらわかるの⁉︎
靴を鳴らすのではありません!静かにお歩きなさい!
すぐに癇癪を起こさないの!少しは我慢しなさい!
お父様みたいにお品良く、落ち着いて行動なさい!
…全く!誰に似たのかしら…!
「…知らないよ…!橋の下から拾われた子なのかもね!」
光の言葉が蘇り、思わず反論する。
暁人が怪訝そうな貌をする。
「…僕はお父様にもお母様にも似ていないから、鬼っ子なのかも…て思ってさ」
暁人は苦笑しながら、薫の傍に腰を下ろす。
「あんなに暁叔父様に似ているんだから、それはないだろう…」
「…あ、そっか…」
暁人は少しの間の後、言葉を選ぶように語り出した。
「…お母様があんなに優しいのは…少し、お父様に遠慮しているからだと思う…」
薫は寝転んだまま、眉を上げる。
「…遠慮?…どうして?」
「…お母様はお父様のことが好きで好きで堪らなくて…泣いてお願いして結婚していただいたんだって」
薫は眼を見張り、起き上がる。
「へえ!あんなに物静かな小母様が⁈凄いね!」
「…うん…。お母様がお父様を死ぬほど好きで、必死にお願いしたから、お父様は結婚して下さったのよ…。お母様はお父様に本当に感謝しているの…。だから、お母様はとても幸せなの…て…よく言ってた…」
…その時の母の寂しげな微笑みを、暁人は今も忘れられない。
「…ふうん…。なんだか凄くドラマチックだね。…でもさ、小父様も小母様が好きだから結婚されたんだろう?好きじゃなかったら結婚なんてされないだろうし…。それに、小父様は小母様を大切にされているじゃないか」
二人はいつも仲睦まじい。
大紋が絢子を見つめる眼差しは常に優しい。
勿論、邪険な態度を取った所など見たことはない。
…だから以前のガーデンパーティーでの大紋の絢子への叱責には驚いたのだ。
…あれは、どうしてなのかな…。
「うん。お母様は優しいよ」
「うちのメドゥーサのようなお母様とは正反対だ。…怒ったりもなさらないだろう?」
「そうだね。怒らないね。いつも優しい」
「いいなあ!…うちのお母様なんか、僕には怒ってばかりだ」
薫は広いベッドに飛び込みごろりと転がる。
…貴方はどうしてそんなに強情なの?どうして素直になれないの?また、ナイフの音を立てて!…汚れた指をテーブルクロスで拭いてはいけないと何度言ったらわかるの⁉︎
靴を鳴らすのではありません!静かにお歩きなさい!
すぐに癇癪を起こさないの!少しは我慢しなさい!
お父様みたいにお品良く、落ち着いて行動なさい!
…全く!誰に似たのかしら…!
「…知らないよ…!橋の下から拾われた子なのかもね!」
光の言葉が蘇り、思わず反論する。
暁人が怪訝そうな貌をする。
「…僕はお父様にもお母様にも似ていないから、鬼っ子なのかも…て思ってさ」
暁人は苦笑しながら、薫の傍に腰を下ろす。
「あんなに暁叔父様に似ているんだから、それはないだろう…」
「…あ、そっか…」
暁人は少しの間の後、言葉を選ぶように語り出した。
「…お母様があんなに優しいのは…少し、お父様に遠慮しているからだと思う…」
薫は寝転んだまま、眉を上げる。
「…遠慮?…どうして?」
「…お母様はお父様のことが好きで好きで堪らなくて…泣いてお願いして結婚していただいたんだって」
薫は眼を見張り、起き上がる。
「へえ!あんなに物静かな小母様が⁈凄いね!」
「…うん…。お母様がお父様を死ぬほど好きで、必死にお願いしたから、お父様は結婚して下さったのよ…。お母様はお父様に本当に感謝しているの…。だから、お母様はとても幸せなの…て…よく言ってた…」
…その時の母の寂しげな微笑みを、暁人は今も忘れられない。
「…ふうん…。なんだか凄くドラマチックだね。…でもさ、小父様も小母様が好きだから結婚されたんだろう?好きじゃなかったら結婚なんてされないだろうし…。それに、小父様は小母様を大切にされているじゃないか」
二人はいつも仲睦まじい。
大紋が絢子を見つめる眼差しは常に優しい。
勿論、邪険な態度を取った所など見たことはない。
…だから以前のガーデンパーティーでの大紋の絢子への叱責には驚いたのだ。
…あれは、どうしてなのかな…。

