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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

「…そうだね。お父様はお母様も僕もとても大切にしてくれている。…僕はお二人とも大好きだ」
暁人は大人びた口調で呟いた。
「…うちも、お父様とお母様は凄く仲良しだよ。
…仲が良すぎて目のやり場に困るくらいさ」
「光さんはいつまでも変わらない。いつも美しく、気高く、華やかで輝いている。…君は私の永遠の愛の女神だ!愛しているよ」
父は誰が居ようと臆面もなく母に最大の賛辞を送るし、母を抱きしめる。
母も父を蕩けるような甘い眼差しでうっとりと見つめ、自分からキスをする。
「…礼也さん。…私もよ、貴方は私の永遠の騎士だわ。…愛しているわ…」
使用人達は、旦那様と奥様の変わらぬ熱い愛の挨拶に見て見ぬふりをする。
菫だけは無邪気に二人に駆け寄る。
「すみれも!すみれにもキスして!おとうちゃま、おかあちゃま!」
二人は苦笑しながらも、可愛くてならないように菫を抱き上げる。
馬鹿馬鹿しくなった薫はその場からさっさと退場するのが常だ。
…僕さえ居なければ、完璧な家族なんだ。
僕だけが不協和音なんだからな…。
薫は素直ではないし、強情だし、行儀も言葉遣いも悪い。バイオリンも上手くないし、気難し屋だから社交嫌いだ。
光が望む理想の息子には程遠い。
…お母様は僕が嫌いなんだ…。
いつしか薫はそう思い込んでいた。
不意に黙り込んでしまった薫に暁人は、躊躇しながらも口を開いた。
「…薫…」
「…ん?」
「…泉のことだけどさ…薫はどう思っているの?」
いきなり暁人の口から泉の名前が出て、薫はどきりとする。
「…な、なんだよ、いきなり…」
「…泉は薫にとって、他の使用人とは違うような気がして…」
奥歯に物が挟まったような言い方をする暁人をちらりと見遣り、わざとつっけんどんに答える。
「そりゃ、違うさ。泉は僕が生まれた時からずっと側にいて、ナニーみたいに僕の世話を焼いてくれていたんだからさ」
…悲しいことや怖いことがあると、薫は泉を呼んだ。
泉はどこにいても飛んで来てくれた。
「…薫様、もう大丈夫ですよ。泉が薫様のお側におりますからね…」
抱きしめてくれた腕と胸はとても温かかった。
泉に抱きしめて貰えたら、哀しみや不安は嘘のように消え去った。
…しかしその胸は、この間のキスの時とは全く違った。
成熟した男の逞しい胸と力強い腕だった。
薫はそのことを思い出すだけで、胸が甘く痛く疼く。
暁人は大人びた口調で呟いた。
「…うちも、お父様とお母様は凄く仲良しだよ。
…仲が良すぎて目のやり場に困るくらいさ」
「光さんはいつまでも変わらない。いつも美しく、気高く、華やかで輝いている。…君は私の永遠の愛の女神だ!愛しているよ」
父は誰が居ようと臆面もなく母に最大の賛辞を送るし、母を抱きしめる。
母も父を蕩けるような甘い眼差しでうっとりと見つめ、自分からキスをする。
「…礼也さん。…私もよ、貴方は私の永遠の騎士だわ。…愛しているわ…」
使用人達は、旦那様と奥様の変わらぬ熱い愛の挨拶に見て見ぬふりをする。
菫だけは無邪気に二人に駆け寄る。
「すみれも!すみれにもキスして!おとうちゃま、おかあちゃま!」
二人は苦笑しながらも、可愛くてならないように菫を抱き上げる。
馬鹿馬鹿しくなった薫はその場からさっさと退場するのが常だ。
…僕さえ居なければ、完璧な家族なんだ。
僕だけが不協和音なんだからな…。
薫は素直ではないし、強情だし、行儀も言葉遣いも悪い。バイオリンも上手くないし、気難し屋だから社交嫌いだ。
光が望む理想の息子には程遠い。
…お母様は僕が嫌いなんだ…。
いつしか薫はそう思い込んでいた。
不意に黙り込んでしまった薫に暁人は、躊躇しながらも口を開いた。
「…薫…」
「…ん?」
「…泉のことだけどさ…薫はどう思っているの?」
いきなり暁人の口から泉の名前が出て、薫はどきりとする。
「…な、なんだよ、いきなり…」
「…泉は薫にとって、他の使用人とは違うような気がして…」
奥歯に物が挟まったような言い方をする暁人をちらりと見遣り、わざとつっけんどんに答える。
「そりゃ、違うさ。泉は僕が生まれた時からずっと側にいて、ナニーみたいに僕の世話を焼いてくれていたんだからさ」
…悲しいことや怖いことがあると、薫は泉を呼んだ。
泉はどこにいても飛んで来てくれた。
「…薫様、もう大丈夫ですよ。泉が薫様のお側におりますからね…」
抱きしめてくれた腕と胸はとても温かかった。
泉に抱きしめて貰えたら、哀しみや不安は嘘のように消え去った。
…しかしその胸は、この間のキスの時とは全く違った。
成熟した男の逞しい胸と力強い腕だった。
薫はそのことを思い出すだけで、胸が甘く痛く疼く。

