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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

…梟が鳴く追分の林を抜けると、その店はふと現れた。
暁はその小金色に輝くランプに照らされた店の看板を見て、ほっと息を吐く。
車を降り、運転手に告げる。
「…迎えはいいよ。ありがとう…」
車が静かに走り去ったのを確認すると、その店の前に立つ。
…Bar Casablanca …
まるでフランスの片田舎にある小さなバールのような佇まいだ。
赤い煉瓦の壁には蔦が這い、青銅に縁取られた小さな窓からは中の灯りが漏れていた。
石畳みを踏みしめながら、暁は古めかしい扉を開いた。
…カウベルが鳴る…。
ランプの光だけの仄明るい店内…。
…蓄音機からは、ドイツ人歌手の愛の歌が流れていた…。
カウンター奥、エプロン姿の初老の白髪の紳士が穏やかに挨拶をする。
「…いらっしゃいませ…」
暁は軽く頭を下げ、カウンターの端に目を留める。
西洋人形めいた端正な貌立ちの長身の男がスツールに座り、グラスを傾けていた。
艶やかな黒髪は無造作に掻き上げられていて、前髪が一筋、額に掛かっている。
藍色のストライプのシャツ、濃紺のスラックス、黒い質の良い革靴…。
シンプルだが、洗練された美しい姿だ。
…暫くその美しい容姿に見惚れ…やがて、彼に静かに歩み寄る。
暁は、愛情を込めて囁く。
「…森…」
…男が静かにグラスを置いて、振り返る。
眼鏡越しの瞳が優しく微笑みかける。
「…こんばんは。…暁…」
暁はその小金色に輝くランプに照らされた店の看板を見て、ほっと息を吐く。
車を降り、運転手に告げる。
「…迎えはいいよ。ありがとう…」
車が静かに走り去ったのを確認すると、その店の前に立つ。
…Bar Casablanca …
まるでフランスの片田舎にある小さなバールのような佇まいだ。
赤い煉瓦の壁には蔦が這い、青銅に縁取られた小さな窓からは中の灯りが漏れていた。
石畳みを踏みしめながら、暁は古めかしい扉を開いた。
…カウベルが鳴る…。
ランプの光だけの仄明るい店内…。
…蓄音機からは、ドイツ人歌手の愛の歌が流れていた…。
カウンター奥、エプロン姿の初老の白髪の紳士が穏やかに挨拶をする。
「…いらっしゃいませ…」
暁は軽く頭を下げ、カウンターの端に目を留める。
西洋人形めいた端正な貌立ちの長身の男がスツールに座り、グラスを傾けていた。
艶やかな黒髪は無造作に掻き上げられていて、前髪が一筋、額に掛かっている。
藍色のストライプのシャツ、濃紺のスラックス、黒い質の良い革靴…。
シンプルだが、洗練された美しい姿だ。
…暫くその美しい容姿に見惚れ…やがて、彼に静かに歩み寄る。
暁は、愛情を込めて囁く。
「…森…」
…男が静かにグラスを置いて、振り返る。
眼鏡越しの瞳が優しく微笑みかける。
「…こんばんは。…暁…」

