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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

古いアンティークの柱時計が、12時を打った。
暁が華奢な手首に嵌めたプレゲの腕時計を見て呟く。
「…そろそろ帰らなきゃ…」
「…もう少し、いいだろう?」
珍しく月城に引き止められる。
それを嬉しく思いながら説明する。
「…明日、春馬さんの家に招待されているんだ。…薫の様子を見てくる」
月城の端正な眉が顰められる。
「…大紋様の…?」
「…一緒にテニスをしよう…て。最近、薫達も始めたんだ」
「…ふ…ん…」
月城の態度があからさまに不機嫌になる。
水割りを煽ると、藤木にお代わりを求めた。
そして、恐ろしく難しい貌をすると吐き捨てるように言った。
「…気に入らない」
「…え?」
「…大紋様は何かと貴方にちょっかいを掛けようとする。実に不愉快だ」
暁は吹き出す。
「絢子さんも暁人くんも薫もいるんだよ。…何もしようがないよ」
月城はきっと鋭い眼差しで暁を見る。
「他の方がいらっしゃらなかったら、何かをなさるのか?…されたことがあるのか?」
暁は慌てて首を振る。
「ないよ。ある訳がない」
月城はまだ疑い深い貌をしていた。
暁はそっと月城の膝に手を置く。
「…僕が愛する人は君だけだ…ずっと、この先も…。…それだけじゃ不満?」
月城は息を吐き、暁の手を握りしめる。
「…すまない。つまらないやきもちを焼いた…」
大紋春馬は月城にとって常にちらつく強力な恋敵のような存在だからだ。
…別れたとはいえ、大紋はずっと今も変わらずに暁を愛している。
…暁は…。
月城を愛しているという言葉に嘘偽りはないだろう。
だが…美しく哀しい想い出は時として、人の心を惑わす…。
月城は暁を愛する余り、そのような懸念までしていたのだ。
暁は嬉しそうに囁いた。
「…やきもちを焼く森は可愛い…。今日は凄く幸せな夜だ。…一生忘れないよ…」
「…暁…」
…こんなにいじらしい恋人に、月城はもうこれ以上何も言えずに、ただその白い手を握りしめ、万感の想いを込めて、その甲に熱いキスを落としたのだった。
暁が華奢な手首に嵌めたプレゲの腕時計を見て呟く。
「…そろそろ帰らなきゃ…」
「…もう少し、いいだろう?」
珍しく月城に引き止められる。
それを嬉しく思いながら説明する。
「…明日、春馬さんの家に招待されているんだ。…薫の様子を見てくる」
月城の端正な眉が顰められる。
「…大紋様の…?」
「…一緒にテニスをしよう…て。最近、薫達も始めたんだ」
「…ふ…ん…」
月城の態度があからさまに不機嫌になる。
水割りを煽ると、藤木にお代わりを求めた。
そして、恐ろしく難しい貌をすると吐き捨てるように言った。
「…気に入らない」
「…え?」
「…大紋様は何かと貴方にちょっかいを掛けようとする。実に不愉快だ」
暁は吹き出す。
「絢子さんも暁人くんも薫もいるんだよ。…何もしようがないよ」
月城はきっと鋭い眼差しで暁を見る。
「他の方がいらっしゃらなかったら、何かをなさるのか?…されたことがあるのか?」
暁は慌てて首を振る。
「ないよ。ある訳がない」
月城はまだ疑い深い貌をしていた。
暁はそっと月城の膝に手を置く。
「…僕が愛する人は君だけだ…ずっと、この先も…。…それだけじゃ不満?」
月城は息を吐き、暁の手を握りしめる。
「…すまない。つまらないやきもちを焼いた…」
大紋春馬は月城にとって常にちらつく強力な恋敵のような存在だからだ。
…別れたとはいえ、大紋はずっと今も変わらずに暁を愛している。
…暁は…。
月城を愛しているという言葉に嘘偽りはないだろう。
だが…美しく哀しい想い出は時として、人の心を惑わす…。
月城は暁を愛する余り、そのような懸念までしていたのだ。
暁は嬉しそうに囁いた。
「…やきもちを焼く森は可愛い…。今日は凄く幸せな夜だ。…一生忘れないよ…」
「…暁…」
…こんなにいじらしい恋人に、月城はもうこれ以上何も言えずに、ただその白い手を握りしめ、万感の想いを込めて、その甲に熱いキスを落としたのだった。

