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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

二人の小気味の良いラリーは暫く続き、暁も健闘したが最終的に僅差で大紋が勝った。
大紋と暁はコート越しに握手をする。
「腕を上げたな。暁」
頼もし気に微笑む。
「いえ、…春馬さんには敵いませんよ。…昔から貴方はスポーツも万能でしたね」
身体を動かした開放感からか、いつになく暁は饒舌で笑顔まで見せる。
大紋はそれを眩し気に見つめながら、タオルで暁の白い額の汗を拭いてやる。
「…ちゃんと拭かないと風邪を引く。…君はよく冷えて熱を出していたから…」
…そのまま、暁の白いうなじにそっと触れる。
どきりとした暁は身を硬くする。
…遥か昔の記憶が蘇る…。
…ほら、ちゃんと汗を拭かないと風邪を引くよ。…暁は風邪を引きやすいから心配だ…。
過保護な大紋は情事の後、よくそう言って暁の裸の身体を拭いてくれた。
…風邪を引いたら、看病してくれますか?
甘えるように見上げると、大紋は必ず頬にキスして子どもを甘やかすように笑った。
…もちろんだ。ずっと側にいて面倒をみてあげるよ。
…嬉しい…。風邪、ひきたくなっちゃった…。
潤んだ瞳で上目遣いに見つめられ、大紋は再び暁を抱きしめる…。
…暁…可愛い…愛しているよ…。
暁は首を振る。
…思い出してはだめだ…。こんなところで…。絢子さんも、暁人くんも、薫もいる…この場所で…。
「…暁…」
大紋の切な気な声が響く。
反射的に見上げると、彼はまるで暁の思いを解っていたかのように強い眼差しで見つめ、腕を掴んだ。
「…はなして下さい…」
はっとしたように大紋が腕を離す。
「…すまない…」
苦しさを滲ませて大紋が詫びる。
…どうして自分は何年経っても、この人と平常心では向かい合えないのだろう…。
自分の心の弱さが情けない。
…どうして思い出してしまうのだろう…。
思い出しても仕方のないことなのに…。
…それは…。
「…君が気に病むことはない」
俯く暁の頭上から優しい声が響く。
ゆっくりと貌を上げる。
優しい…哀しみが透ける微笑みを浮かべ、男が告げる。
「…全て僕が悪い。…僕がいつまでも君を愛しているのが悪いのだ…」
暁の肩に優しく手を置くと、暁人や薫のいる賑やかなコートサイドに向ってゆく。
その今も変わらずにすらりと威厳に満ちた美しい後ろ姿を見送る。
…それは…
…貴方との想い出が、今でも美しくて哀しすぎるからです…。
大紋と暁はコート越しに握手をする。
「腕を上げたな。暁」
頼もし気に微笑む。
「いえ、…春馬さんには敵いませんよ。…昔から貴方はスポーツも万能でしたね」
身体を動かした開放感からか、いつになく暁は饒舌で笑顔まで見せる。
大紋はそれを眩し気に見つめながら、タオルで暁の白い額の汗を拭いてやる。
「…ちゃんと拭かないと風邪を引く。…君はよく冷えて熱を出していたから…」
…そのまま、暁の白いうなじにそっと触れる。
どきりとした暁は身を硬くする。
…遥か昔の記憶が蘇る…。
…ほら、ちゃんと汗を拭かないと風邪を引くよ。…暁は風邪を引きやすいから心配だ…。
過保護な大紋は情事の後、よくそう言って暁の裸の身体を拭いてくれた。
…風邪を引いたら、看病してくれますか?
甘えるように見上げると、大紋は必ず頬にキスして子どもを甘やかすように笑った。
…もちろんだ。ずっと側にいて面倒をみてあげるよ。
…嬉しい…。風邪、ひきたくなっちゃった…。
潤んだ瞳で上目遣いに見つめられ、大紋は再び暁を抱きしめる…。
…暁…可愛い…愛しているよ…。
暁は首を振る。
…思い出してはだめだ…。こんなところで…。絢子さんも、暁人くんも、薫もいる…この場所で…。
「…暁…」
大紋の切な気な声が響く。
反射的に見上げると、彼はまるで暁の思いを解っていたかのように強い眼差しで見つめ、腕を掴んだ。
「…はなして下さい…」
はっとしたように大紋が腕を離す。
「…すまない…」
苦しさを滲ませて大紋が詫びる。
…どうして自分は何年経っても、この人と平常心では向かい合えないのだろう…。
自分の心の弱さが情けない。
…どうして思い出してしまうのだろう…。
思い出しても仕方のないことなのに…。
…それは…。
「…君が気に病むことはない」
俯く暁の頭上から優しい声が響く。
ゆっくりと貌を上げる。
優しい…哀しみが透ける微笑みを浮かべ、男が告げる。
「…全て僕が悪い。…僕がいつまでも君を愛しているのが悪いのだ…」
暁の肩に優しく手を置くと、暁人や薫のいる賑やかなコートサイドに向ってゆく。
その今も変わらずにすらりと威厳に満ちた美しい後ろ姿を見送る。
…それは…
…貴方との想い出が、今でも美しくて哀しすぎるからです…。

