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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
テニスの後、一汗流してから涼しい木陰で皆でランチを摂る。
…真っ白な上質なリネン、高価な銀食器、ロイヤルアルバートの皿…その上に載る料理は子どもも大人も楽しめるような吟味された素材を上手く生かした美味なるものばかりだ。
「薫さんはこちらに来てから、トマトが召し上がれるようになったのよ。ね?」
絢子が優しく薫に話しかける。
「うん。だって、ここで食べる食事は美味しいんだもの」
薫も伸び伸びと楽しそうだ。
苦手だったはずのラムローストも元気に口に運ぶ。
「それは良かった。…絢子さんのお陰です。薫に何くれとなくお気遣い頂いて、ありがとうございます」
暁の礼に対して、絢子は恥ずかしそうに首を振る。
「とんでもありませんわ。…信州のお野菜が新鮮で美味しいからです」

絢子はいつも謙虚で控えめだ。
元子爵令嬢なのに決して偉ぶらないし、虚飾もない。
常にしとやかで穏やかで気品があり、正に大紋にお似合いの良妻賢母である。
暁は絢子の若々しく可愛らしい貌を見つめる。
…絢子さんみたいな方が春馬さんの奥様で良かった…。
かつては絢子を憎んだこともあった暁だが、今は心からそう思える。

「うるさいお母様がいないからさ。…松濤の家では僕がナイフやフォークを動かすたびにやいのやいの…。食欲も失せるさ」
薫が美しい貌にそぐわない毒舌を吐く。
「…薫…」
暁はそっと窘める。
「だってそうじゃないか。お母様は四六時中僕にお小言ばかり言うんだもの。…でも絢子小母様はいつも優しい。怒らないし、にこにこしてくれる。…だからごはんも美味しいのさ」
絢子は穏やかに、しかし凛とした口調で答えた。
「…それはね、私が薫さんに責任がないからだわ。だから無責任に優しく出来るの」
「…え…?」
薫が戸惑ったように絢子の貌を見上げる。
絢子は静かに諭すように続ける。
「…お母様は貴方の人生に責任があるの。貴方を立派な人間に育てようと真剣に向き合っていらっしゃるから、真剣にお叱りになるのよ。…薫さんを愛していらっしゃるから…解って差し上げて…?…ね?」
テーブルが静まり返る。
いつも控えめで、優しい絢子の静かな…そして真摯なその言葉は皆の心に染み渡る。
薫は黙り込んだ。
「…薫…。絢子さんの仰る通りだ」
暁も口を添える。
頑固者の薫は可愛らしい唇をへの字に曲げ、ガツガツとラムローストを平らげ始めた。


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