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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

強情な薫はこんな時は何を言ってもだめだ。
綺麗な貌のまま、無言でラムローストを平らげると、ブリオッシュを掴み、バターナイフも使わずに皿の上に乗せられたバターの塊をパンになすりつけ、そのままかぶりついた。
光が眼にしたら卒倒しそうな…マナーもなにもあったものではない所作で食事を続ける薫に、叔父としてさすがに叱らなくては…と厳しい表情をした暁が口を開こうとしたその時…。
「…まあ、お母様という生き物はすべからく口うるさいものさ。…私の母もうるさかったなあ…。テーブルマナー、ドアの開け閉め、口の利き方…。もううんざりして、よく癇癪を起こしては喧嘩していたよ」
朗らかな大紋の声が響いた。
…薫がパンを食べる手を止め、大紋を見つめる。
「…小父様も…お母様と喧嘩していたの…?」
大紋が優しい眼差しで頷く。
「ああ、そうさ。薫くんだけじゃない。大抵の子どもはお母様と喧嘩して反抗して成長していくものなのだ。
…今はお母様の気持ちなどわからないかも知れないが、いずれきっと分かるようになる。…薫くんは本当は気持ちの優しい良い子なんだから…。
…さあ、もっと食べなさい。パンが温かい内に…」
大紋の慈愛に満ちた言葉に、薫はようやく表情を和らげ、そっとバターナイフを取ると、行儀よくバターをパンに塗り始めた。
その様子を見て暁はほっと胸を撫で下ろした。
思わず大紋を見ると彼も暁を見て、穏やかに微笑んで頷いた。
暁は感謝の意味を込めて、そっと微笑んだ。
綺麗な貌のまま、無言でラムローストを平らげると、ブリオッシュを掴み、バターナイフも使わずに皿の上に乗せられたバターの塊をパンになすりつけ、そのままかぶりついた。
光が眼にしたら卒倒しそうな…マナーもなにもあったものではない所作で食事を続ける薫に、叔父としてさすがに叱らなくては…と厳しい表情をした暁が口を開こうとしたその時…。
「…まあ、お母様という生き物はすべからく口うるさいものさ。…私の母もうるさかったなあ…。テーブルマナー、ドアの開け閉め、口の利き方…。もううんざりして、よく癇癪を起こしては喧嘩していたよ」
朗らかな大紋の声が響いた。
…薫がパンを食べる手を止め、大紋を見つめる。
「…小父様も…お母様と喧嘩していたの…?」
大紋が優しい眼差しで頷く。
「ああ、そうさ。薫くんだけじゃない。大抵の子どもはお母様と喧嘩して反抗して成長していくものなのだ。
…今はお母様の気持ちなどわからないかも知れないが、いずれきっと分かるようになる。…薫くんは本当は気持ちの優しい良い子なんだから…。
…さあ、もっと食べなさい。パンが温かい内に…」
大紋の慈愛に満ちた言葉に、薫はようやく表情を和らげ、そっとバターナイフを取ると、行儀よくバターをパンに塗り始めた。
その様子を見て暁はほっと胸を撫で下ろした。
思わず大紋を見ると彼も暁を見て、穏やかに微笑んで頷いた。
暁は感謝の意味を込めて、そっと微笑んだ。

