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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「…アレイオン…お前はおとなしい良い子だね。…薫も慣れてくれるといいね」
暁はまだ若い牡の駿馬の首筋を撫でながら馬脚を進める。
アレイオンは昨年、薫へのクリスマスプレゼントととして礼也が贈った栗毛のアラブ種だ。
馬術にあまり興味を示さない薫に代わり、暁が主に世話をしたり調教をしている。

…暁の可愛がっていたアルフレッドは昨年の春、老衰で眠るように息を引き取った。
アルフレッドが立てなくなってから暁は馬丁に世話を任せず、時間が許す限り側にいた。
最期は暁に看取られながら、静かに亡くなった。
馬房の中、冷たくなってゆくアルフレッドの体を撫でながら涙を流す暁を、月城は黙って抱き寄せた。
アルフレッドは暁が礼也に引き取られ、馬術を習い始めた頃、礼也から譲られた親友のような愛馬だった。
暁の悲しみは深かった。

それから暫くは馬場に近寄ることができなかった暁だが、最近になり漸く他の馬に触れるようになってきた。
アレイオンはその名の通り、人の言葉を解するような賢い馬だった。
そして、どこかアルフレッドに似た優しく人好きする性格の馬だ。

…もう馬は飼いたくないと礼也に漏らした暁に、
「…では、薫の馬を代わりに調教してくれないか?暁以外に頼める人がいないのだ」
と、優しく頼み込んで来たのだ。
それは礼也の優しさなのだろう。
暁に馬術を続けて欲しいが、新たな馬を持たせるにはまだ時間がかかると判断し、そのような提案をしてくれたのだ。
…礼也は相変わらず暁を包み込むように愛してくれる。

木立の間の道をやや速足で駆ける。
しばらく遠乗りに連れ出していなかったアレイオンは張り切って進もうとする。

…糸杉の並木道を抜けると、不意に視界が開かれる。
目の前に雲場池がエメラルドの水面を湛えて広がっていた。

暁は時計を見る。
…時計の針は二時近くを指している。

…帰ってくれていたらいいのに…。
池の畔をゆっくりと進む。

…大きな楠木に寄りかかるようにして佇み、池を眺めている男…。
近くには育ちの良さそうな白馬が繋がれている。

暁はゆっくりと馬を進ませた。
…蹄の音に、男がゆっくりと振り返る。
理知的で端正な貌に無邪気な笑顔が浮かび、暁の胸は思いがけずに疼く。

アレイオンを男の前まで進ませ、彼を見つめる。
…大紋春馬…かつて暁が愛し、身を切られるような思いで別れたその男の前で…。

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