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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
大紋は、栗毛の駿馬に跨りやや緊張した面持ちで見下ろす暁を見つめた。
レースがあしらわれた白い立て襟のシャツブラウス、黒のリボンタイ、黒い糸瓜襟のウエストが細くシェイプされた乗馬ジャケット、白い乗馬ズボン、黒い牛革の長ブーツは長く美しい脚に良く映える。
やや強張った貌は透き通るように白く、整った目鼻立ちは出逢った頃と変わらない楚々とした…どこか儚げな美貌であった。

暁は黙ってしなやかな動きで馬から降りた。

「…来てくれたんだね」
声をかけると、にこりともせずに貌を背ける。
「…アレイオンを遠乗りさせたかっただけです」
「それでも構わない。…来てくれて嬉しいよ」
「…約束の時間も大分過ぎていたから…」
俯きながら答えると、貌を覗き込むように微笑った。
…その表情はかつての大紋と少しも変わらず、腹立たしいほどに暁の胸を疼かせる。
「帰ったと思った?…君が来なくても、ずっと待つつもりだったよ。…夜が来てもね」
暁は美しい眉を顰めて尖った声を出す。
「馬鹿なことを言わないでください。…そんなことをされたら、絢子さんも暁人くんも心配します」
「暁は心配してくれる?」
「心配なんてしません」
暁はその場から足早に離れ、池の畔に立つ。
「どうして僕が貴方の心配なんてしなくちゃならないんですか。…貴方なんて…もう僕にとって何でもない人なのに…」
大紋は苦笑する。
「これは手厳しいな。…こんなに嫌われていたとはね…」
雲場池の水面は不思議なほどに凪ていて、波一つ立っていない。
…昔…春馬さんに遠乗りの帰りに連れて来てもらったっけ…。

美しい池を眺め目を輝かせる暁の肩を引き寄せ、大紋は唇を奪った。
…愛しているよ、暁…。
愛しているとは最後まで言えなかった暁の代わりに、大紋は愛の言葉を繰り返した。
…愛しているよ、誰よりも…。

…昔の話だ…。
…けれど…。

「…心配なんかしません。…ただ…貴方が一人でこの池で僕を待ち続けていることを考えたら…どうしようもなく胸が痛くなっただけです…」
…それだけのことだ。

「…暁…!」
切羽詰まったような大紋の声を聞きながら、淡々と話し始める。
「…貴方を嫌いになれたらいいのに…月城を愛しているのに…貴方は僕の心の片隅にずっと居座っている…貴方を愛していた記憶が僕を悩ませる…貴方をもう愛してはいないのに…」
…愛してなんかいないのに…。

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