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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「…暁…!すまない…!
…君を苦しめても、僕は君の本心を知りたかった…」
「…春馬さん…」
大紋はぎこちなく暁の頬に触れる。
暁の貌に触れるのは久しぶりすぎて、触れていることが夢のような気がしたのだ。
暁の滑らかな白い頬、涙の露を乗せた長い睫毛、漆黒の闇よりも深く黒い瞳、彫刻刀で刻んだような美しい鼻筋、桜色の唇、形の良い顎…。
何もかも昔と少しも変わらない愛しい暁の姿がここにあった…。

そして振り絞るように告げる。
「愛しているよ…今も昔も変わらずにずっと…。この年になって、僕はずっと考えていた。…残りの人生を偽りの気持ちで生きてゆくのは嫌だと…」
「…春馬さん…?」
「…僕は後悔している。君のこの手を離したことを。…ずっとずっと…この13年間は後悔の日々だった。
…絢子を嫌いなわけではない。むしろ、好きだ…。
彼女は良い妻で良い母親だ。…暁人は可愛い。掛け替えのない子どもだ。…けれど、時間を巻き戻せるならば、君に別れを告げられたあの日に帰りたい。あの日に帰ってやり直したい。…何も考えずに君の手を取り、知らない土地に行き、やり直したい。…それが僕の後悔だ」
「…やめてください。…そんな…。じゃあ、絢子さんのこの13年間は何なんですか?貴方を死ぬほど愛して、貴方に必死で愛されようとしてきたこの13年間は…。
貴方の子どもを産み、ご立派に育てられたのですよ。
…それに…最終的には貴方はご自分で絢子さんを選ばれた…」
暁は涙が乾くことのないその双眸で大紋を見つめる。

「…貴方の結婚式の日、僕は教会に行きました」
…あの日の光景が昨日のことのように蘇る。
光の粒のごとく煌めくライスシャワー、華やかな友人達の歓声、可愛らしく幸せそうな新婦…そしてその腕を優しく取る美しい新郎…。
ミモザの花に隠れるように佇む自分…。

…大紋と目が合い…口唇だけで伝えた。
…愛しています…と。

驚愕したように見開かれた大紋の瞳…。
鳴り響く教会の鐘の音…。
一瞬ののち、暁は姿を消した。

「…愛していると、一度も伝えられなかったから…伝えにいこう…そう思って教会に行ったのです。
…でも…もしかしたら、貴方に僕を奪って欲しくて、行ったのかも知れません…」
「…暁…⁉︎」

暁は哀しみの滲んだ眼差しを男に向ける。
…あの日のことを、こうして口に出す日が来るとは思わなかった…。

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