この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

離山の別荘の正面に、月城は車を停めた。
助手席に回り暁を引き摺り出すと、再び腕を強く掴む。
玄関に入ると、ブーツのままで中に引き摺り込まれる。
「月城…!話しを聞いて…!」
廊下を進み、寝室のドアを乱暴に押し開ける。
そのまま暁を寝台の上に突き飛ばす。
「…あっ…!」
仰向けに倒れた暁に月城はゆっくりと近づき、覆い被さる。
人形のような完璧な美貌からは感情が全く伝わらない。
…それだけ、彼が押し殺しているものの強さを感じさせ、暁は身を固くする。
腕を磔のように上げさせ、手首を折らんばかりに押さえつける。
「…話?…大紋様と恋人のように抱き合われた貴方から、一体何の弁解を聞けば良いのですか?」
「違うんだ…あれは…!」
…あの抱擁は色恋のそれではないと、月城にどう説明すれば分かって貰えるだろうか…。
男の眼は恐ろしいほどに醒めて暁を冷酷なまでに見下ろしていた。
「…貴方は私に嘘を吐かれて大紋様に会われた。…それが答えではありませんか?」
暁の瞳が見開かれる。
震える薄紅色の唇が必死で答えようとする。
「…それは…君に余計な心配をかけたくなかったから…」
月城の形の良い薄い唇が冷たく歪む。
「…いいえ、貴方は疾しいお気持ちがあったからこそ、私に嘘を吐かれて大紋様に会いに行かれたのです。
…つまり…貴方はまだ大紋様を愛しておられるのですよ…」
「それは違う!」
咄嗟に叫ぶ。
「僕が愛しているのは君だ。君だけだ!…分かっているだろう?…」
月城はゆっくりと首を振る。
その一分の狂いもない完璧な美貌には虚無的な色が纏わりつき、普段の月城とは明らかに様子が違っていた。
「…分かりません。…もはや私には…貴方が何を考えているのか…誰を愛しているのか…」
その美しい手を暁の貌には伸ばす。
「…貴方は私を裏切った…。分かっていることはそれだけです」
その手が暁の白くほっそりとした首筋にかかる。
「…裏切ってなんかいない…僕は春馬さんとは何もない。信じてくれ…」
懸命に訴える暁に、諦観に満ちた微笑みを送る。
「貴方はまだ大紋様がお好きなのです。…無理もない…大紋様は縣様に勝るとも劣らない素晴らしい紳士だ。…貴方とお二人でいらっしゃる光景は…まるで美しい絵のようだった…」
「…何を言っているんだ…月城!」
暁は必死で男の手を握りしめる。
ひんやりとした手からは何の感情も伝わらなかった。
助手席に回り暁を引き摺り出すと、再び腕を強く掴む。
玄関に入ると、ブーツのままで中に引き摺り込まれる。
「月城…!話しを聞いて…!」
廊下を進み、寝室のドアを乱暴に押し開ける。
そのまま暁を寝台の上に突き飛ばす。
「…あっ…!」
仰向けに倒れた暁に月城はゆっくりと近づき、覆い被さる。
人形のような完璧な美貌からは感情が全く伝わらない。
…それだけ、彼が押し殺しているものの強さを感じさせ、暁は身を固くする。
腕を磔のように上げさせ、手首を折らんばかりに押さえつける。
「…話?…大紋様と恋人のように抱き合われた貴方から、一体何の弁解を聞けば良いのですか?」
「違うんだ…あれは…!」
…あの抱擁は色恋のそれではないと、月城にどう説明すれば分かって貰えるだろうか…。
男の眼は恐ろしいほどに醒めて暁を冷酷なまでに見下ろしていた。
「…貴方は私に嘘を吐かれて大紋様に会われた。…それが答えではありませんか?」
暁の瞳が見開かれる。
震える薄紅色の唇が必死で答えようとする。
「…それは…君に余計な心配をかけたくなかったから…」
月城の形の良い薄い唇が冷たく歪む。
「…いいえ、貴方は疾しいお気持ちがあったからこそ、私に嘘を吐かれて大紋様に会いに行かれたのです。
…つまり…貴方はまだ大紋様を愛しておられるのですよ…」
「それは違う!」
咄嗟に叫ぶ。
「僕が愛しているのは君だ。君だけだ!…分かっているだろう?…」
月城はゆっくりと首を振る。
その一分の狂いもない完璧な美貌には虚無的な色が纏わりつき、普段の月城とは明らかに様子が違っていた。
「…分かりません。…もはや私には…貴方が何を考えているのか…誰を愛しているのか…」
その美しい手を暁の貌には伸ばす。
「…貴方は私を裏切った…。分かっていることはそれだけです」
その手が暁の白くほっそりとした首筋にかかる。
「…裏切ってなんかいない…僕は春馬さんとは何もない。信じてくれ…」
懸命に訴える暁に、諦観に満ちた微笑みを送る。
「貴方はまだ大紋様がお好きなのです。…無理もない…大紋様は縣様に勝るとも劣らない素晴らしい紳士だ。…貴方とお二人でいらっしゃる光景は…まるで美しい絵のようだった…」
「…何を言っているんだ…月城!」
暁は必死で男の手を握りしめる。
ひんやりとした手からは何の感情も伝わらなかった。

