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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「…月城さん、月城さん…」
…メイドが呼ぶ声にはっと我に帰る。
新入りのメイドが心配そうに月城を見つめていた。
「…ああ、すまない…。ぼんやりしてしまって…」
昼食のワインを選びにワインセラーに入ったまま出てこない月城を呼びに来たメイドは、やや熱っぽい眼差しで見つめながら告げた。
「縣男爵様ご一家のお車がお着きになりました」
「…ありがとう。今行く…」
まだ何か言いたげな眼をしたメイドにワインを託すと、部屋を出て階下に上る。

玄関に出ると、華やかなアフタヌーンドレスを身に纏った梨央と綾香が既に歓迎の為に並んでいた。
「…どうしたの?月城。余り顔色が良くないわ」
梨央が気遣わしげに尋ねる。
綾香は悪戯めいた眼差しで微笑む。
「…月城は相変わらず恋の病?…重症ね」
月城は口元だけでそっと笑い、下僕に到着したばかりのメルセデスのドアを開けるように指示する。

ドアを開けると、まず子犬が転がるように縣家の長女菫が降りて来て、梨央と綾香に駆け寄る。
「りおおばちゃま!あやかおばちゃま!ごきげんよう!」
薄桃色の夏のドレスを着た菫は妖精のように愛らしい。その愛らしい姿に二人は思わず微笑みを漏らし、抱き上げる。
「いらっしゃい、菫ちゃん!お熱はすっかり下がったのね。良かったわね」
「相変わらず可愛らしいわね。…でも、おばちゃまではなくおねえちゃまと呼んでね?」
「はい!あやかおばちゃま!」
無邪気に笑う菫に周りから温かい笑いが起こる。

…今週に入り、風邪が治った菫を連れた光が軽井沢の別荘に到着した。
飯塚の炭鉱視察を終えた礼也も昨日、軽井沢に着いたのだ。
皆、軽井沢に到着したということで、梨央と綾香は縣一家と大紋一家を昼食会に招待すると言い、本日を迎えた。

月城は緊張した面持ちで後部座席から降り立つ人物の貌を見つめる。
…まず、雄々しいオーラを周囲に振りまきながら正装姿の礼也が降り立ち、妻の光を恭しくエスコートする。
…そして、ドアは静かに閉められた。

…暁の姿はなかった。
当然だと思いながらも、月城の心は針で刺されたように鋭く痛む。

…やはり暁様はいらっしゃらなかった…。
自分と貌を合わさなくてはならない北白川家の昼食会に、来るはずはないと分かっていたのに、暁の欠席を目の当たりにすると、心は激しく痛む。
…暁の傷心と憔悴が推し量られるからだ。


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