この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

裏庭の井戸で月城にポンプを押してもらい、薫はカイザーの足を洗う。
暑い昼下がりなのでカイザーはそのまま全身に水を浴び、舌を出しながら喜んでいた。
「カイザー、気持ちいいかい?良かったね!」
無邪気に笑う薫は本当に可愛らしい。
暁に良く似た美しい貌立ちを見て、暁の少年時代を思い出す。
…昔、初めて会った時、暁は儚げで頼りなげでその姿を見ただけで、手を差し伸べてあげたくなるような…そんな可憐な少年だった。
…愛人の子どもということで、他の貴族の子弟達に遠巻きにされていた暁を温室に案内した。
暁は初めて見る北白川伯爵家の美しい温室の花々に、声も出せないほど感動していた。
そして、呟いた。
…美しすぎて、夢みたいです…。
僕はこの夢から目覚めたら、またあの長屋に一人ぼっちなのかな…。
…そうやや怯えたような瞳をした暁がいじらしく、月城は思わず少年の手を取った。
…この手は、夢ではありませんよ。
貴方は確かに現実にいらっしゃるのです。
そう安心させると、暁はひっそりと咲く白い花のように嬉しそうに微笑ったのだ。
…あの日から…私はきっと、暁様の虜になっていたのだ。
知らず知らずの内に、少しずつ惹かれ…気がつくと取り返しのつかないような恋に堕ちていたのだ…。
…その気持ちは今も全く色褪せずに私の胸に息づいている。
…けれど、暁様はもう私の貌など見たくはないだろう…。
恋人の心を踏みにじり、無理やり身体を奪うような男を…暁様は二度とお許しにはならないだろう…。
暗く沈みゆく月城の貌を不思議そうに薫が見つめる。
「…ねえ、月城…。暁叔父様はどうなさったの?」
月城ははっと我に返る。
「…暫くお貌を見ていないから、寂しくて…。
…月城は暁叔父様と仲が良かったよね。…喧嘩でもしたの?」
暁似の…しかし性格はまるで違う…薫の貌を見つめる。
…この他人の心情に敏感な多感な少年はもしかしたら、月城と暁の関係性を何となく察知しているのかも知れない。
縣家では礼也と光は月城と暁の関係を承知しているが、わざわざ口外はしていない。
しかし、この頭の良い繊細な少年には何かしら感じるものがあるのかもしれない…と、月城は思った。
月城は淡々と答える。
「…いいえ、喧嘩はしていません。…けれど…私は暁様のお心を大変に傷つけてしまったのです」
口に出した途端、月城の胸は激しく痛む。
暑い昼下がりなのでカイザーはそのまま全身に水を浴び、舌を出しながら喜んでいた。
「カイザー、気持ちいいかい?良かったね!」
無邪気に笑う薫は本当に可愛らしい。
暁に良く似た美しい貌立ちを見て、暁の少年時代を思い出す。
…昔、初めて会った時、暁は儚げで頼りなげでその姿を見ただけで、手を差し伸べてあげたくなるような…そんな可憐な少年だった。
…愛人の子どもということで、他の貴族の子弟達に遠巻きにされていた暁を温室に案内した。
暁は初めて見る北白川伯爵家の美しい温室の花々に、声も出せないほど感動していた。
そして、呟いた。
…美しすぎて、夢みたいです…。
僕はこの夢から目覚めたら、またあの長屋に一人ぼっちなのかな…。
…そうやや怯えたような瞳をした暁がいじらしく、月城は思わず少年の手を取った。
…この手は、夢ではありませんよ。
貴方は確かに現実にいらっしゃるのです。
そう安心させると、暁はひっそりと咲く白い花のように嬉しそうに微笑ったのだ。
…あの日から…私はきっと、暁様の虜になっていたのだ。
知らず知らずの内に、少しずつ惹かれ…気がつくと取り返しのつかないような恋に堕ちていたのだ…。
…その気持ちは今も全く色褪せずに私の胸に息づいている。
…けれど、暁様はもう私の貌など見たくはないだろう…。
恋人の心を踏みにじり、無理やり身体を奪うような男を…暁様は二度とお許しにはならないだろう…。
暗く沈みゆく月城の貌を不思議そうに薫が見つめる。
「…ねえ、月城…。暁叔父様はどうなさったの?」
月城ははっと我に返る。
「…暫くお貌を見ていないから、寂しくて…。
…月城は暁叔父様と仲が良かったよね。…喧嘩でもしたの?」
暁似の…しかし性格はまるで違う…薫の貌を見つめる。
…この他人の心情に敏感な多感な少年はもしかしたら、月城と暁の関係性を何となく察知しているのかも知れない。
縣家では礼也と光は月城と暁の関係を承知しているが、わざわざ口外はしていない。
しかし、この頭の良い繊細な少年には何かしら感じるものがあるのかもしれない…と、月城は思った。
月城は淡々と答える。
「…いいえ、喧嘩はしていません。…けれど…私は暁様のお心を大変に傷つけてしまったのです」
口に出した途端、月城の胸は激しく痛む。

