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第3章 秘密の花園

夜勤を終えた月城は、離山の別荘の車寄せに慌ただしく車を停め、鍵を開けるのももどかしく、中に足を踏み入れる。

「暁様！暁様！おられますか⁈」
暁の名前を叫びながら廊下を歩き、全ての部屋を探す。

しかし月城の声は家中に虚しく響き渡るばかりで、何の返事もなかった。

寝室はきちんとベッドメイクされ、ダイニングも泉が届けたらしい夜食がそのままキッチンに置かれていた。

…暁様…！どこに行かれたのですか…⁈
月城はいてもたってもいられずに、唇を噛み締めながら再び外に出て、車に乗り込む。

…街灯もない軽井沢の夜道は、どこまでも暗い。
闇夜に迷い泣く幼子の暁の幻想が浮かび、月城の胸をきりきりと痛めた。

…暁は縣家にも戻ってはいなかった。
「…俺が夜食をお届けした時にはいらしたぜ。…兄貴…」
使用人玄関で心配そうな眼をする泉に、月城は毅然と言い放つ。
「…大丈夫だ。…私が、必ずお探しする…」

心当たりのあるところは全て探した。
…暁が行きそうなレストラン、ホテル、馬術クラブのカフェ、そして、BAR Casablanca…。
それらのどこにも、暁はいなかった。

…どこに行かれたのですか…暁様…！
…一体どこに…

…ふと、ある考えが頭に浮かび、月城はブレーキを踏む。
…もしや…暁様…！

月城は猛然と車のハンドルを切り、今来た道と別の方向へと車を走らせたのだった。