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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
林道に車を乗り捨て、夜道をひたすらに走る。
…こんなに走ったのは何年ぶりだろうか…。
故郷の村で、夏祭り中に迷子になった妹を夜通し探し周った。
夜半に人里離れた森の中から、妹の泣き声が聞こえた刹那に走り出して以来だと、月城は遥か昔の記憶を思い出していた。
あの時と同じくらい…いや、それ以上に必死で駆けて行く。

…暁様…!…暁様…!
月城の頭の中にはその言葉しか思い浮かばなかった。

息を弾ませ、眼を凝らす。
…遠くにカンテラの灯りがぼうっと見えた。
池の水面が月の光に照らされて、きらきらと反射している。
…小さな船着場に、ぼんやりとした人影が見えた瞬間、月城は叫びながら、走り寄る。

「暁様!」
人影が振り返った。

…透明な青白い月の光に照らされた、輝くばかりに美しい人の貌が明らかになる。
驚いたように見開かれた、その闇夜よりも深い色の瞳…。
月城の震える唇が言葉を刻むより先に、彼は暁を引き寄せ、その胸に抱きしめていた。
…異国の花のような切ない薫りが胸に染み入る。
…暁様だ…暁様がいらした…!

「…暁様…!…お許しください!」
「…つき…しろ…?」
耳に響く掠れた甘やかな声…
…他の誰でもない、愛おしい最愛のひとの声だ。
だが、まだ怖くてかのひとの貌を見ることが出来ない。
だから、ひたすらに彼を抱きしめ、許しを乞う。
「…愚かな私をお許しください…!…私は…私は取り返しのつかない過ちを犯しました…。この命よりも大切な貴方の心と身体を傷つけてしまいました…。
…許されるとは思っていません。…お許しにならなくてもいい…。ただ…私が貴方のお側にいることを、お許しください!…貴方のお側で、一生を掛けてこの罪は償います。…貴方が嫌だというのなら、もう…このように貴方に触れはしません…」
…自分の言葉に怖気づき、月城はぎこちなく暁を抱く腕を解く。
「…貴方に一生、触れなくてもいい…。ただ、お側にいさせてください…!」
振り絞るような月城の言葉が闇夜に消えてゆく。

…暁は黙ったままだ。
情けないことに、暁の貌を見る勇気がない。
…拒絶されるのだろうかと思ったその時…。
ふわりと優しい、夜目にも白い手が月城の頬に当てられた。
「…やっと…来てくれた…」
「…暁様…」
「…ずっと…ずっと…待っていたんだ…君を…」
…月の光に輝く暁の瞳に透明な涙が浮かぶ。



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