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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
…数日後の真夜中、暁は月城に誘われるままに、北白川伯爵家の池を訪れていた。
月城に優しく手を差し伸べられ、小舟に乗る。

小舟にはやはり白い褥のような敷布が敷かれ、柔らかなクッションが置かれていた。
暁は月城の腕枕で横たわりながら、黄金色に輝く美しい月と満天の星を夢心地で眺めていた。

…数日前、哀しみと寂しさに満ちた心でこの池の水面を見ていたことが嘘のように幸せで、暁は男のシャツの胸を子どものようにきゅっと掴んだ。
月城はそんな心を読むかのように暁の頭を引き寄せ、艶やかな黒髪にそっとくちづけをする。
「…また君とこんなに綺麗な夜空が見えた…。僕は幸せだ…ありがとう…」
健気でいじらしい言葉に胸が甘く締め付けられる。
「…暁様…」
月城は返事の代わりに暁を強く強く抱きしめる。

…小舟に打ち寄せる小さな波の音以外何も聞こえない静寂の中、月城が静かに起き上がる。
暁をもゆっくりと抱き上げると、その手を握りしめ優しく囁いた。

「…眼を閉じて下さい…」
暁は一瞬不思議そうな貌をしたが、素直にその瞼を閉じた。
月城は月の光に輝き、照り映える様な優美な美貌を見つめながら、そっと小箱から出した指輪を暁の華奢な薬指に優しく嵌めた。

…その感触に驚いた暁が長い睫毛を震わせる。
「眼を開けて下さい…」
恐る恐る瞼を開き、自分の左手を見つめる。

…煌々と照らされた左手の薬指には、静かに冴え冴えと輝くプラチナの指輪が嵌められていた。
「…これ…」
暁の唇から震える小さな声が囁かれる。
「…私から貴方への結婚指輪です」
月城の言葉を聞き、暁の華奢な肩が震える。
「…結…婚…」
小刻みに震える白い手を優しく握りしめる。
「…本当は、もっとずっと前から貴方にプロポーズしたかった。…だが、自信がなかった。…本当に私は貴方に相応しい人間なのか…。貴方を本当に幸せに出来るのか…貴方にはもっと地位も名誉もある立派な方がいるのではないかと…。ずっと迷い続けてきました…。
けれど、今回のことで漸く分かりました。…私には貴方が必要なのです。貴方に相応しい人間でなくても、私は貴方から離れたくないのだと…。貴方だけを愛しているのだと…。
…それで…やっとプロポーズする決心が着いたのです」
月城が握りしめる暁の白い手に透明な雫が静かに落ちる。
「…月…城…」
暁の声は震え、言葉にならない。

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