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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
朝食室に入ると、光がその美しい瞳で恐ろしいほどの鋭さで薫を睨んだ。
「何時だと思っているの?朝食は8時きっかりと決まっているでしょう?」
薫は早々にむっとして
「8時15分です。時計くらい読めます」
木で鼻をくくるように答える。
光はそれでも抑え気味に、薫を叱る。
客人の暁人が同じテーブルに並んでいるからだ。
「皆さんをお待たせしているのよ。…何て言うの?」
朝食室の楕円形のテーブルには、暁と暁人が並び、薫を見て悪戯っぽく微笑んだ。
「ごめんなさい。暁叔父様、暁人。…あれ?お父様は?」
「春馬さんと狩りに行かれたよ」
暁がナプキンを広げながら答える。
信州は野生動物の宝庫だ。
父も大紋も狩猟の名手だった。
「へえ!狩りかあ。…僕も狩りの方が良かったなあ。乗馬はつまらないもの」
光の鋭い叱責が飛ぶ。
「お母様の話を聞いているの?ちゃんと反省しているの?時間にルーズな人間は信用されませんよ。…それから…貴方、お母様に謝っていないわ」
朝からうんざりなお説教に薫は、癇癪を爆発させそうになったが、さすがに暁人に気まずい思いをさせてはならないと、憮然とした声で詫びる。
「…ごめんなさい、お母様」
全く心が篭らない謝罪に光は溜息を吐いたが、下僕に目配せして朝食を運ばせる。

焼き立てのクロワッサンやトーストの良い香りが立ちこめ、下僕が熱い珈琲をサーブし始めて、ようやく場も和み始めた。

給仕が差し出すスクランブルエッグとキドニービーンズを皿に取り分けながら、光は暁人に尋ねる。
「暁人さんはもう狩りはなさったの?」
「一度だけ…。でも、僕はやはり狩りは苦手のようです。銃も好きではありませんし…馬術の方が好きです」
暁は穏やかに暁人に話しかける。
「君は優しそうだものね。…僕も狩りはどうしても好きになれなかったな。…狐狩りに野鳥狩り…沢山兄さんに連れて行っていただいたけれどね」
暁人は暁の輝くような美貌を目の当たりにして、頬を染める。

光は美しい所作でベーコンを切り分けながら女王のような威厳を漂わせて答える。
「狩りは貴族の教養のひとつよ。暁人さんのおうちは爵位はなくともご立派なお家柄なのだから、出来るに越したことはないわ」
「はい、小母様」
折り目正しく返事をする暁人はまるで上流階級の子弟のお手本のようだ。
美しい容姿に相応しい服装にマナーに言葉遣い。
…薫は溜息を吐いた。

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