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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
光は薫の溜息を聞き咎めた。
「なぜ溜息を吐いたの?」
「…僕もお父様と狩りに行きたかったです。…なぜお母様と馬場に行かなくてはならないのですか?」
今日はこれから母と暁、暁人と薫の四人で乗馬倶楽部で馬に乗らなくてはならないのだ。
…暁人と暁はともかく、光と一緒に乗馬など拷問に等しい行為だからだ。
「貴方が狩りなんてとんでもありませんよ。…貴方みたいに癇癪持ちで雑な人間が銃を触ってごらんなさい。たちまち暴発してあの世行きだわ」
光の辛辣な言葉に薫は苛立ち、わざとナイフをジノリの皿に当てた。
案の定、鬼のような眼差しで睨まれる。

暁が静かに宥める。
「薫がまだ余りアレイオンに慣れていないようだから、お母様は早く慣れるようにとのお心遣いなんだよ」
…馬術に興味がない…というか苦手な薫にとって、アレイオンは言うことを聴かない暴れ馬のような存在だ。
…実を言うと高いところが苦手な薫は馬上ですら怖じ気づくのだ。
大好きな叔父に言われても納得いかない。
暁はクロワッサンを細かく千切りながらぶつぶつ呟いた。
「…大体何で馬術をやらなきゃいけないのかわかんないよ。…無理やり馬術部にも入れられたしさ。僕は馬は好きじゃない。お父様やお母様が得意だからって、僕に押し付けるのはやめて欲しいよ」
光は、低い声で薫を諌めると、滔滔と語り出した。
「パンを千切るのはおやめなさい。それから、貴方に拒否する権利はないのよ。…子どもの教育方針は親が決めるのです。私もお父様もそうやって親に厳しく躾られてきたのよ。様々な教養を身に付けるのは貴族の子弟の義務です」
薫はカッとなり立ち上がる。
「お母様は横暴だよ!絢子小母様はそんなこと絶対に仰らない!お母様は鬼だ!鬼ババ!」
暁人がおろおろしながら二人を見る。

光の美しい瞳が細められ、その瞳の中に静かな怒りの炎が灯った瞬間、ぱたぱたと軽い靴音が響き、朝食室の扉が元気に開いた。
「お母ちゃま!すみれ、ちゃんとおしょくじすんだわ!」
ナニーと共に子ども部屋で朝食を済ませた菫が駆け込んで来たのだ。
白い夏のドレスを着た菫は桃色のリボンで髪を結び、人形のような可愛らしさだった。
光はたちまち相好を崩し、愛おしげに菫を抱き上げる。
「まあ、菫!お利口さんだこと!」
そして砂糖菓子のように甘い声で語りかける。
…それは先程の光とは別人のように優しい姿であった。


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