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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

暁人は薫が気になり、馬場の外に出しなに、再び二人を振り返った。
薫は光の指示に、渋々従いながら馬を走らせる。
そんな暁人を見て、暁はふっと笑う。
「…気になる?薫が」
暁人は生真面目な顔で頷く。
「はい。…あの…、光小母様は少し薫に厳しすぎるのではないでしょうか…?…薫が可哀想です…」
我が事のように胸を痛めている表情だ。
そんな暁人を暁は好もしく思った。
「君のお母様は物静かでお優しいからね。光さんはとても厳しくて…もしかしたら意地悪に見えるかも知れないな」
「…はい。…小母様は菫ちゃんや僕にはあんなにお優しいのに…」
暁は目を細めて、光と薫を見つめる。
薫を事細かに指導している光の様子が、遠目からでも分かる。
「…僕はそうは思わないな。光さんは薫を立派な紳士に育てようと真剣に薫と向き合っている。…そして…はたからは分かりにくいけれど、薫をとても愛していると思う。
…僕は薫が羨ましい。…薫は僕がなりたかった子どもそのものだ」
「…え?」
意外そうに目を見張り、暁を振り返る。
「うん。…羨ましい。…優しくて頼もしい父親、厳しいけれど、子どもの将来を真剣に考えている母親、可愛い妹、友達想いな親友…」
暁は暁人の目を見て微笑む。
「…僕はね、14までとても貧しい暮らしをしていた。…父親は生まれた時からいなかった。…母親は…僕を必死で育ててはくれたけど…男運が悪くてね、君にはとても話せないような仕打ちをやくざ者の男にされて…僕も暴力を振るわれたこともある。…今でもその悪夢を見て、うなされて目覚める日もある…」
美しく優し気な暁の横顔が哀しげに曇る。
「…暁小父様…」
「…僕はあの頃、毎晩夢見ていた。…ここではないどこかに行きたいと。…頼もしい両親に守られたい…ひもじい思いをせずに毎日満たされて、学校に行きたい…友だちが欲しい…と」
…薫が馬から落馬する。
光はそれをじっと見つめ、立ち上がるように毅然と促す。
…厳しい…しかし真摯に子どもと向かい合う確固たる母親の表情だ。
「…僕は薫が羨ましい。薫は幸せな子どもだ。
…早くそれに本人が気づくといいな…と僕は願っているよ」
包み込むような慈愛に満ちた美しい眼差し…。
…綺麗だな…と暁人は思わず見惚れた。
「さあ、僕らも行こうか」
暁は鐙を蹴ると颯爽と馬を操り、駆け出した。
暁人は慌てて、彼の後を追った。
薫は光の指示に、渋々従いながら馬を走らせる。
そんな暁人を見て、暁はふっと笑う。
「…気になる?薫が」
暁人は生真面目な顔で頷く。
「はい。…あの…、光小母様は少し薫に厳しすぎるのではないでしょうか…?…薫が可哀想です…」
我が事のように胸を痛めている表情だ。
そんな暁人を暁は好もしく思った。
「君のお母様は物静かでお優しいからね。光さんはとても厳しくて…もしかしたら意地悪に見えるかも知れないな」
「…はい。…小母様は菫ちゃんや僕にはあんなにお優しいのに…」
暁は目を細めて、光と薫を見つめる。
薫を事細かに指導している光の様子が、遠目からでも分かる。
「…僕はそうは思わないな。光さんは薫を立派な紳士に育てようと真剣に薫と向き合っている。…そして…はたからは分かりにくいけれど、薫をとても愛していると思う。
…僕は薫が羨ましい。…薫は僕がなりたかった子どもそのものだ」
「…え?」
意外そうに目を見張り、暁を振り返る。
「うん。…羨ましい。…優しくて頼もしい父親、厳しいけれど、子どもの将来を真剣に考えている母親、可愛い妹、友達想いな親友…」
暁は暁人の目を見て微笑む。
「…僕はね、14までとても貧しい暮らしをしていた。…父親は生まれた時からいなかった。…母親は…僕を必死で育ててはくれたけど…男運が悪くてね、君にはとても話せないような仕打ちをやくざ者の男にされて…僕も暴力を振るわれたこともある。…今でもその悪夢を見て、うなされて目覚める日もある…」
美しく優し気な暁の横顔が哀しげに曇る。
「…暁小父様…」
「…僕はあの頃、毎晩夢見ていた。…ここではないどこかに行きたいと。…頼もしい両親に守られたい…ひもじい思いをせずに毎日満たされて、学校に行きたい…友だちが欲しい…と」
…薫が馬から落馬する。
光はそれをじっと見つめ、立ち上がるように毅然と促す。
…厳しい…しかし真摯に子どもと向かい合う確固たる母親の表情だ。
「…僕は薫が羨ましい。薫は幸せな子どもだ。
…早くそれに本人が気づくといいな…と僕は願っているよ」
包み込むような慈愛に満ちた美しい眼差し…。
…綺麗だな…と暁人は思わず見惚れた。
「さあ、僕らも行こうか」
暁は鐙を蹴ると颯爽と馬を操り、駆け出した。
暁人は慌てて、彼の後を追った。

