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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
暁は暁人と並んで馬を走らせる。
暁人は華奢な薫に比べ、背も高く身体つきがしっかりしていて、12歳とは思えないほどに青年のような体格をしていた。
知的で端正な横顔は、大紋に生き写しだ。
春馬さんの少年時代はこんな感じだったのかな…。
暁は暁人を見て感に耐える。
…春馬さんの子どもと一緒に馬に乗る日が来るなんて…。
歳月の流れる早さに、しみじみと感慨を覚える。
暁と目が合った暁人は不思議そうな貌をした。
「…あの…?」
「ああ、ごめんね。…君を見ていると、春馬さんを思い出してしまって…」
「お父様を…?」
「…うん。…よく似て来たね…」
…目元なんか…そっくりだ…。
「…あの、小父様はお父様のことを昔からご存じなのですか?」
「うん。君くらい小さな時からね…。僕が星南の編入試験を受けるのに、春馬さんが英語の家庭教師をしてくれたんだ」
…14歳だった。春馬さんは大人で知的で優しくて…そしてとてもハンサムで…兄さんと同じくらいの憧れを抱いた。

…暁は今でも思い出す。…大紋の話す美しい音楽のようなキングスイングリッシュを…。
居間で、サンルームで、東屋で…そして…美しい温室で受けた英語の授業の数々を…。
貧民窟で育った暁には、まるでそれらはお伽話の一場面のようだったのだ。
…大紋が自分に話しかけ笑いかけてくれて、初めて現実なのだと認識できるほどに…。

…月城には言わないけれど…暁のとても大切な思い出のひとつだ。
暁人が躊躇いつつも、勇気を出して口を開く。
「…あの…昔から疑問だったのです。…僕の名前…。
…なぜ暁小父様のお名前が付いているのかな…て…」
暁はゆっくりと振り返る。
黒曜石のように輝き、そしてどこか艶を帯びた瞳が暁人を見つめる。
「…春馬さんは何て?」
「…お父様は…暁と言う字が好きだからだ…て。そう言って笑って…それだけです」

…けれど暁人は、父親が自分の名前を呼ぶ時にいつも切なげな眼をすることを知っている。
…もしかして…父親と暁は…。

暁は暁人の心の声に応えるかのように、優しく告げた。
「…春馬さんは僕の名前を気に入って褒めてくれた。光栄だよ」
「本当に…それだけですか?」
暁はもう一度暁人を見つめる。
そして、夜に咲く妖しくも儚げな白い花のように微笑った。
異国の花めいた切ない薫りが漂う。
「…そうだよ、それだけだ。…他に理由は何もない…」



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