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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
鷹司は可笑しそうに薫の貌を覗き込む。
「まるで借りてきた猫だ。さっきの凄い剣幕はどこにいったの?」
「あ、あれは…!お母様に腹が立ったからつい…!」
「美しきお母様に反抗か…。可愛いね、薫は」
鷹司は形の良い唇の端に煙草を咥えながら器用に喋る。
その仕草に思わず見惚れる。
…うちではお父様がたまに葉巻を嗜まれるくらいだ。
「反抗…て言うか…お母様は僕の貌を見ればお小言しか言わないから!…だからつい僕も癇癪起こしちゃって…」
…反抗したくて反抗しているわけじゃない…
不承不承答える。
「意外だなあ。社交界で拝見する光様はとてもリベラルで大らかで…細かいことなんか気になさらない自由人に見えるのに」
薫は眉を顰める。
「…社交界のお母様…?」
「ああ。…ぼくも去年漸く顔を出すようになったのだけど、光様がいらっしゃると夜会の雰囲気ががらりと変わるのさ。皆が息を飲んで光様に注目する。
…美しくて凛々しくて気高くて優雅で…そして妖艶で…まさに大輪の紅薔薇のようなお方だよ」
鷹司は瞳を輝かせて絶賛する。
薫は口を尖らせる。
「…お母様が…?…そうかなあ…。僕にはにこりともしないよ。まあ、大抵僕が怒られるようなことをするからなんだけど…」
「…例えば?」
「犬のカイザーをお母様のベッドに入れたり、妹の菫のケーキを横取りして泣かせたり、バイオリンのG線をわざと切ったり、学校のテストを紙飛行機にして飛ばしたり…お庭の池に落ちててバレちゃったんだけどさ。…ああ、お母様の狐の毛皮をカイザーの絨毯にした時は鬼のように怒られたな。カイザーが喜んで全部噛みちぎっちゃったからさ…でも、それくらいですよ」
鷹司は弾けるように笑い転げる。
お腹を抱えて笑い転げる鷹司はさっきまでの物憂げな彼とは別人のように陽気だ。
「あははは!…こりゃ傑作だ!…とんだいたずらっ子だな。…光様にはご同情申し上げるよ」
「…そうですか?でも、それにしても僕には怒ってばかりですよ。…お母様は…僕が嫌いなんです。妹の菫ばかり可愛がって…」
薫は膨れながら足をぶらぶらさせる。
…光が見たら一秒で叱責が飛ぶ行為だ。

「…妹さんはいくつ?」
「三歳です」
鷹司はふっと笑う。
それは優しくて…そしてどこか寂しげな笑みだった。
「…そりゃ仕方ないさ…」
そして…
「…君は幸せな子どもだな…」
と、そっと少し羨ましげに呟いた。



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