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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
暁はなだらかな丘の傾斜を巧みに馬を操りながら上がっていった。
「…月城…!」
そして樫の木の側に佇み、自分を愛おしげに見上げる男に輝くような笑顔を向ける。
「今日は馬場に行くと聞いていたから…もしかしたら会えるかも…て思っていたんだ」
まるで恋する少女のように声を弾ませて、男に話しかける。

月城は暁が馬上から降りるのに手を添えてやりながら、優しく見つめる。
「はい。綾香様が明日、遠乗りをしたいと仰いましたので、デジレの様子を見にまいりました」
デジレはまだ若い鹿毛のサラブレッドだ。
光のように闊達な綾香は馬が大好きで、軽井沢に滞在中はよく馬に乗るのだ。
梨央は乗馬は嗜む程度なので専らお相手は光か、もしくは友人の夫人…時には月城が一緒に伴走することもあった。

月城の手を握りしめながら、柔らかな地面に降り立つ。
「…明日は君が綾香さんのお相手を?」
月城は首を振る。
「いいえ。明日は光様が遠乗りにご一緒してくださると伺っております」
光は実は趣味の中で乗馬が一番好きだ。
だから連日でも苦にならないのだろう。
暁は、綾香の乗馬の相手が月城でないことに密かにほっとした。
もちろん二人の関係を疑っている訳ではない。
…ただ…今だに月城の傍らに美しく魅力的な女性が存在すると胸の中がちりちりと焼け付くような妬心に襲われるのだ。

…愛されていると解っていても、不安になる…。
この例えようもなく美しく気高く…誰もが憧れるすこぶるつきの魅惑的な男が、本当に永遠に自分を愛してくれるのか…。
ふとしたはずみで美しい女性に目を奪われないか…。
それはもはや暁の癖になっている心配ごとであった。

…愛すれば愛するほどに不安になる…。
月城の愛を信じているのに…疑ってはいないのに…。
暁は月城を余りに愛しすぎていて、自家中毒のように疑心暗鬼の感情に囚われることが未だにあるのだった。

そんな暁の感情を月城はすぐに読み取る。
包み込むように暁を見つめ、優しく抱き締める。
そして言葉少なに…しかし、暁を安心させる一言をくれるのだ。
「…何もご心配なさいませんように…」
月城の水仙の薫りに包まれて、暁はうっとりと目を閉じる。
…彼がいれば何もいらない…。
暁は自分にとっての唯一無二の愛おしい男に抱き締められながら、その眩暈がするほどの幸福感を噛み締めるのだった。



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