この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園

光は少し他愛のない話をした後、辺りを見渡し眉を顰める。
「…薫は…こちらには来てはいないようね…」
どうやら薫を探しにきたらしい。
「はい。…先ほど暁人くんも気になると言われて薫のところに向かいました。…義姉さん、薫は…?」
小さく溜息を吐きながら、光はハットを脱ぐ。
美しい黒髪がさらりと解け、肩に落ちる。
しかし光の貌はすっかり母親のそれになっていた。
「…馬場から逃げ出したわ。…それから…絢子さんがお母様だったら良かった…て言われた…。
…私は鬼みたいに冷たい…て…」
はっとするほどに寂し気な微笑みをその勝気な美貌に浮かべる。
「…義姉さん…」
光は形の良い唇を歪め、皮肉めいた笑みを浮かべる。
しかし、その表情には母親の苦悩が透けていた。
「…あの子は…本当に私にそっくり…。
気が強くて、我儘で、癇癪持ちで…。嫌いなことは頑としてやろうとしない…。…嫌になってしまうわ…」
「…義姉さん…」
光が弱音を吐くところなど初めて見た。
「…私はこの性格で随分窮屈な思いをしたわ…。教師にも疎まれて、学校では問題児扱い…。それでパリのリセに留学したの。
…だからあの子の性格を早く矯正したいの…。礼也さんみたいに誰からも愛される礼儀正しくて気高くて…非の打ち所のない男性に育てたいの」
光の母親としての悩みや本音に初めて触れ、暁は胸を突かれる。
光が礼也を心から尊敬している姿も、微笑ましいと思う。
「…義姉さん、薫はとても良い子です。それは…少し我儘でマナーが未熟なところもありますが、それは後々きっと直ります。…それから、義姉さん。…義姉さんも兄さんも何をなさってもとても優秀でいらっしゃいます。学業、語学、音楽、ダンス、馬術、社交術…。
けれど薫がそれらを全て同じようにこなせるとは限りません。薫には薫の特技や個性があります。…それを伸ばしてあげるのはいかがですか?薫には良いところや優れているところもたくさんあります」
暁にとって薫は可愛い甥っ子だ。
貌が自分に似ていることもそうだが、自分には無邪気に慕ってくれる。
薫の良さや可愛いところを光にも知って認めて欲しい。
暁は光も大好きだ。
だから何とかこの親子が上手くいくように力になりたかったのだ。
「…薫は…こちらには来てはいないようね…」
どうやら薫を探しにきたらしい。
「はい。…先ほど暁人くんも気になると言われて薫のところに向かいました。…義姉さん、薫は…?」
小さく溜息を吐きながら、光はハットを脱ぐ。
美しい黒髪がさらりと解け、肩に落ちる。
しかし光の貌はすっかり母親のそれになっていた。
「…馬場から逃げ出したわ。…それから…絢子さんがお母様だったら良かった…て言われた…。
…私は鬼みたいに冷たい…て…」
はっとするほどに寂し気な微笑みをその勝気な美貌に浮かべる。
「…義姉さん…」
光は形の良い唇を歪め、皮肉めいた笑みを浮かべる。
しかし、その表情には母親の苦悩が透けていた。
「…あの子は…本当に私にそっくり…。
気が強くて、我儘で、癇癪持ちで…。嫌いなことは頑としてやろうとしない…。…嫌になってしまうわ…」
「…義姉さん…」
光が弱音を吐くところなど初めて見た。
「…私はこの性格で随分窮屈な思いをしたわ…。教師にも疎まれて、学校では問題児扱い…。それでパリのリセに留学したの。
…だからあの子の性格を早く矯正したいの…。礼也さんみたいに誰からも愛される礼儀正しくて気高くて…非の打ち所のない男性に育てたいの」
光の母親としての悩みや本音に初めて触れ、暁は胸を突かれる。
光が礼也を心から尊敬している姿も、微笑ましいと思う。
「…義姉さん、薫はとても良い子です。それは…少し我儘でマナーが未熟なところもありますが、それは後々きっと直ります。…それから、義姉さん。…義姉さんも兄さんも何をなさってもとても優秀でいらっしゃいます。学業、語学、音楽、ダンス、馬術、社交術…。
けれど薫がそれらを全て同じようにこなせるとは限りません。薫には薫の特技や個性があります。…それを伸ばしてあげるのはいかがですか?薫には良いところや優れているところもたくさんあります」
暁にとって薫は可愛い甥っ子だ。
貌が自分に似ていることもそうだが、自分には無邪気に慕ってくれる。
薫の良さや可愛いところを光にも知って認めて欲しい。
暁は光も大好きだ。
だから何とかこの親子が上手くいくように力になりたかったのだ。

