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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
光が暁を見上げる。
普段は強い意志が感じられる琥珀色の美しく強い瞳が、やや弱気な色を帯びていた。
「…暁さんは私より薫のことを分かって下さっているのね…」
そして、ふと寂しそうに付け加える。
「薫は、貴方には心を開いているのね。…母親の私より…」
「…義姉さん…」

しかし、直ぐに毅然と頭を上げる。
そこには迷いや弱さは一切なかった。
「…でもいいの。私は絢子さんみたいに優しくて子どもに好かれる母親になろうとは思っていないわ。
…私は薫に嫌われても構わないの。
嫌われても、憎まれてもいいからあの子を礼也さんみたいな立派な男性に育て上げるわ。…薫は縣男爵家の跡取りよ。私はあの子を誰が見ても称賛されるような完璧な貴族に育てる責任があるの」
「…義姉さん…」
暁はもう口を挟まなかった。
それは光の揺らぐことのない堅固な意志を汲み取ったからだ。
…獅子は幼い子どもを千尋の谷へと突き落とすという。
どのような逆境であっても強く生きていけるように育てるためだ。
光は光なりに薫を愛し、全力でぶつかっているのだ。
自分は二人を見守るしかないと、口を噤んだ。

二人のやり取りを静観していた月城が穏やかに口を開いた。
「…光様は良いお母様ですね」
光は驚いて、眼を見張る。
「まさか!…私なんて、薫が言うように鬼のように冷たくて血も涙もない母親よ…」
自虐的に唇を歪める光に月城は首を振る。
「いいえ。…光様はお母様として一番厳しい道を選ばれておられます。けれどそれは薫様を思えばこその行為です。…今はお分かりにならなくても、薫様はいつかきっと光様のお気持ちをご理解なさることでしょう」
「…月城…」
月城は光を労わるように肩に手を置いた。
「大丈夫です。薫様は光様と縣様のお子様です。賢く誇り高いお二人の血をお引きになっていらっしゃいます。必ずご立派にご成長遊ばすでしょう…」
「…月城…ありがとう…」
光の美しい瞳にはきらりと光るものがあった。
暁は、光の普段は決して見せない弱さを可愛らしく思いながらも、光にそのような表情をさせる月城にやはり密かに嫉妬をしたのだった。

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