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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
馬房に入り、アレイオンの様子を見ようと柵に手をかけた時に肩を掴まれる。
「…何をお怒りになられているのですか?」
困ったような優しい眼差し…。
だから余計に苛立ちが募り、その手を振り払う。
「放っておいてくれ。…君が気づかないくらいに君にとっては下らないことなんだから…」
…どうしてこんなに感じの悪い言い方しか出来ないのだろうか…。
自分が情けなくなり、暁はそっと唇を噛みしめる。
ふわりと温かい腕が暁の背中を抱きしめる。
…清冽な水仙の薫りに包まれる。
心を癒すような低い美声が耳元で囁かれる。
「…仰って下さらなくては分かりません。…私が暁様のお心を傷つけたのなら謝ります。…貴方を傷つけることが何より辛いのですから…」
温かい腕…温かい言葉…。
暁の刺々しくささくれていた心が一気に柔らかく解ける。
「…下らないことだ…。言ったら君はきっと笑う…」
暁は俯く。
月城の細身だが逞しい腕がぎゅっと暁を抱きしめる。
「笑ったりしません。貴方が仰ることに下らないことなどありません」
「……」
「暁様…?」
暁はおずおずと口を開く。
「…君は…義姉さんが好き…?」
「…え?」
「…好きなんだろう?…昔、義姉さんと何かあったみたいだし…。君は義姉さんにはすごく優しいし…。
…それは…義姉さんは本当に綺麗だし、賢くて、強くて、多才だし、華やかだし…きらきら輝くような素晴らしい女性だから無理もないけれど…でも…義姉さんは人妻なんだから…」
暁の言葉の途中で月城の身体が小刻みに震えだした。
「…月城…?」
見ると、月城は暁の肩に顔を埋めて必死で笑いを堪えていた。
「わ、笑わないって言ったのに!」
頬を赤らめて抗議する暁に月城は笑いをかみ殺しながら、貌を振り向かせる。
「申し訳ありません。…暁様があまりに可愛くて、我慢できませんでした」
「…なっ…⁈」
月城は微妙みながら、暁の小さな美しい貌を引き寄せる。
「…光様は昔から私が尊敬申し上げている女性です。それ以上でもそれ以下でもありません」
「…本当に…?」
「…はい…だって、私にはここにこんなにも可愛らしくお美しい方がいらっしゃるのですよ。…他の方など眼には入りません」
月城はそう言って、左手の指を絡ませる。
二人の銀の指輪がお互いの指に当たる。
痛いくらいに絡ませ合いながら、強く握り合う。
「…月城…」
…暁が甘い声を漏らした。
「…何をお怒りになられているのですか?」
困ったような優しい眼差し…。
だから余計に苛立ちが募り、その手を振り払う。
「放っておいてくれ。…君が気づかないくらいに君にとっては下らないことなんだから…」
…どうしてこんなに感じの悪い言い方しか出来ないのだろうか…。
自分が情けなくなり、暁はそっと唇を噛みしめる。
ふわりと温かい腕が暁の背中を抱きしめる。
…清冽な水仙の薫りに包まれる。
心を癒すような低い美声が耳元で囁かれる。
「…仰って下さらなくては分かりません。…私が暁様のお心を傷つけたのなら謝ります。…貴方を傷つけることが何より辛いのですから…」
温かい腕…温かい言葉…。
暁の刺々しくささくれていた心が一気に柔らかく解ける。
「…下らないことだ…。言ったら君はきっと笑う…」
暁は俯く。
月城の細身だが逞しい腕がぎゅっと暁を抱きしめる。
「笑ったりしません。貴方が仰ることに下らないことなどありません」
「……」
「暁様…?」
暁はおずおずと口を開く。
「…君は…義姉さんが好き…?」
「…え?」
「…好きなんだろう?…昔、義姉さんと何かあったみたいだし…。君は義姉さんにはすごく優しいし…。
…それは…義姉さんは本当に綺麗だし、賢くて、強くて、多才だし、華やかだし…きらきら輝くような素晴らしい女性だから無理もないけれど…でも…義姉さんは人妻なんだから…」
暁の言葉の途中で月城の身体が小刻みに震えだした。
「…月城…?」
見ると、月城は暁の肩に顔を埋めて必死で笑いを堪えていた。
「わ、笑わないって言ったのに!」
頬を赤らめて抗議する暁に月城は笑いをかみ殺しながら、貌を振り向かせる。
「申し訳ありません。…暁様があまりに可愛くて、我慢できませんでした」
「…なっ…⁈」
月城は微妙みながら、暁の小さな美しい貌を引き寄せる。
「…光様は昔から私が尊敬申し上げている女性です。それ以上でもそれ以下でもありません」
「…本当に…?」
「…はい…だって、私にはここにこんなにも可愛らしくお美しい方がいらっしゃるのですよ。…他の方など眼には入りません」
月城はそう言って、左手の指を絡ませる。
二人の銀の指輪がお互いの指に当たる。
痛いくらいに絡ませ合いながら、強く握り合う。
「…月城…」
…暁が甘い声を漏らした。