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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
大紋は苦笑いをしながら、光を見る。
「うちは光さんや礼也みたいに貴族ではないから、教育なんて適当ですよ。…私が忙しいから暁人の教育も全て絢子任せで…。反省していますよ。…暁人がきちんと育ったのは絢子のお陰だ」
そう言って大紋は絢子を優しく見つめた。
…その視線には今までにないような深く思いやるような温度が感じられ、暁は自分まで心が温まるような気持ちになった。
絢子は少女のように恥じらい、俯く。
「…そんな…私など、大したことはしてはおりません。
暁人はとても手が掛からない子どもで…母親の私が頼りないから本人がしっかりしたのでしょう」
謙虚な言葉に、大紋は微笑みながらその小さな白い手を握り締めた。
「…絢子さんは本当に穏やかでお優しいものね。…薫は絢子さんがお母様なら良かった…て。今日も言われたわ」
形の良い美しい唇に皮肉めいた笑みを浮かべながらも、光はどこか傷ついたような表情をしていた。
「だって!お母様が鬼みたいに怖いのが悪いんじゃないか!落馬しても助けてもくれないし!」
薫は負けじと反撃する。
光がきらりとした瞳で薫を見返した時、暁は話題を逸らすように、口を開いた。
「…そういえば、今日は鷹司紳一郎くんというとても頼もしい薫たちの馬術部の先輩に会いましたよ、兄さん」
礼也はロマネコンティを口に運びながら、眉を上げた。
「ほう…鷹司紳一郎…。どこかで聞いた名前だな…」
暁は少し悪戯っぽい眼差しで光と礼也を見た。
「…九条夫人の夜会で、義姉さんにワルツを申し込んだ青年だそうですよ」
礼也は、ああ…と合点をいかせた。
「鷹司公爵の息子か。…思い出した。社交界デビューの日に一番に君にワルツを申し込んだ勇気ある青年だ」
光はきらきらした妖艶な瞳を細めた。
「…とても美しくて礼儀正しい青年だったわ。ワルツもとてもお上手で…17歳と思えないほど大人びたリードをなさるの。…楽しい夜だったわ」
礼也は大袈裟に両手を広げ、嘆いてみせる。
「…ああ、我が最愛の奥方が若い美青年に心ときめかすとは…。私もうかうかしてはいられないな」
光は礼也の頬を優しく撫でる。
「…お馬鹿さんね。貴方が一番に決まっているじゃないの。礼也さんみたいにハンサムで優しくて頼りになる男性は他にはいないわ。…それに…相変わらずとてもセクシーだし…」
光は礼也を人前でも臆面もなく褒める。
「うちは光さんや礼也みたいに貴族ではないから、教育なんて適当ですよ。…私が忙しいから暁人の教育も全て絢子任せで…。反省していますよ。…暁人がきちんと育ったのは絢子のお陰だ」
そう言って大紋は絢子を優しく見つめた。
…その視線には今までにないような深く思いやるような温度が感じられ、暁は自分まで心が温まるような気持ちになった。
絢子は少女のように恥じらい、俯く。
「…そんな…私など、大したことはしてはおりません。
暁人はとても手が掛からない子どもで…母親の私が頼りないから本人がしっかりしたのでしょう」
謙虚な言葉に、大紋は微笑みながらその小さな白い手を握り締めた。
「…絢子さんは本当に穏やかでお優しいものね。…薫は絢子さんがお母様なら良かった…て。今日も言われたわ」
形の良い美しい唇に皮肉めいた笑みを浮かべながらも、光はどこか傷ついたような表情をしていた。
「だって!お母様が鬼みたいに怖いのが悪いんじゃないか!落馬しても助けてもくれないし!」
薫は負けじと反撃する。
光がきらりとした瞳で薫を見返した時、暁は話題を逸らすように、口を開いた。
「…そういえば、今日は鷹司紳一郎くんというとても頼もしい薫たちの馬術部の先輩に会いましたよ、兄さん」
礼也はロマネコンティを口に運びながら、眉を上げた。
「ほう…鷹司紳一郎…。どこかで聞いた名前だな…」
暁は少し悪戯っぽい眼差しで光と礼也を見た。
「…九条夫人の夜会で、義姉さんにワルツを申し込んだ青年だそうですよ」
礼也は、ああ…と合点をいかせた。
「鷹司公爵の息子か。…思い出した。社交界デビューの日に一番に君にワルツを申し込んだ勇気ある青年だ」
光はきらきらした妖艶な瞳を細めた。
「…とても美しくて礼儀正しい青年だったわ。ワルツもとてもお上手で…17歳と思えないほど大人びたリードをなさるの。…楽しい夜だったわ」
礼也は大袈裟に両手を広げ、嘆いてみせる。
「…ああ、我が最愛の奥方が若い美青年に心ときめかすとは…。私もうかうかしてはいられないな」
光は礼也の頬を優しく撫でる。
「…お馬鹿さんね。貴方が一番に決まっているじゃないの。礼也さんみたいにハンサムで優しくて頼りになる男性は他にはいないわ。…それに…相変わらずとてもセクシーだし…」
光は礼也を人前でも臆面もなく褒める。