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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「そういえば菫はお隣のイタリア大使の息子さんともすっかり仲良しになったのよ。今日はお茶に呼ばれたのですって。大使ご夫妻が、こんなに可愛らしくて綺麗な女の子は初めて見たと感激されて、なかなか帰して下さらなかったとナニーが言っていたわ。
菫は貴方にそっくりね。人懐こくて明るくて素直で誰からも愛されて…。本当に良い子だわ」
自分のことのように喜び、称賛する光を優しく見つめながら、礼也は妻を後ろからぎゅっと抱きしめる。

「そうだね。菫は本当に可愛い女の子だ。
…けれど、薫も私達二人には掛け替えのない可愛い可愛い子どもだよ…」
鏡越しの光の貌が途端に曇る。
「光さん?」
咎める訳ではない、穏やかに見つめる夫の貌をちらりと見て、光は溜息を吐いた。
「…薫は…貌は暁さんそっくりの美しい子どもだけれど…性格はうんざりするほど私に生き写し…。
…我儘で、勝気で、生意気で、癇癪持ちで…。大人に煙たがられて、問題児扱いされて…。
…私はこの性格で随分生き辛かった。
だから薫はそうならないように、厳しく躾けているのに…ちっとも良い子にならないわ…。本当に嫌になるほど頑固だもの」

妻の複雑な想いを、礼也はきちんと受け止めてやる。
「君が薫をとても心配しているのは良く解るよ。憎まれてもいいから薫を正しい方向に導こうとしている志は立派だ。
…だが薫はそんなに悪い子かな?私は君の勝気で我儘で生意気で癇癪持ちの性格が大好きだよ。
堪らなく魅力的だからね。
薫も同じだ。生意気だって、怒りっぽくたって、多少お行儀が悪くたって、子どもらしくていいじゃないか。
それに薫はとても優しい子だ。甘えはするが使用人に偉そうな口をきいたことはないし、彼らに可愛がられている。…そりゃたまには悪戯をして生田に叱られているが、他愛のないものだ。
暁人くんを始め、良い友人もいる。教師に反発するのは思春期に有り勝ちなことだ。…薫に完璧なものを求めなくても良いじゃないか…?あの子にはあの子の良さや特技がある。それを温かく伸ばしてやろうじゃないか」

礼也は光の気持ちは良く分かっていた。
光は自分の性格が好きではないのだ。
だから薫を見ていると、合わせ鏡で自分の嫌なところを余すところなく晒されているような気がして、堪らないのだ。
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