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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
そうしてハンカチを胸ポケットから取り出すと、薫の涙を拭き、鼻をかんでやる。
泉は、兄のような父のような親しみ深い笑みを浮かべる。
「そんなに早く大人にならなくて良いのですよ。…私は薫様が大人になって行かれるご様子をゆっくり拝見したいです…」
「でも…!」
薫は不満そうだ。
「…僕が大人になるまでに、泉に恋人が出来たらどうしたらいいの?」
…気持ちは焦るばかりだ。
泉は大人だ。
あんなにいとも容易く薫に極上の快楽を与えてくれるほどに…成熟した大人の男なのだ。
一方、薫はまだ12歳…子どもだ。
泉に釣り合うまで、あと何年かかるだろう…。
…その間、泉はずっと薫を待っていてくれるのだろうか…。
不安そうな薫を泉は慈愛に満ちた眼差しで見つめる。
「…お約束します。私は薫様が大人になり、薫様に相応しい方と巡り会われるまではずっと一人でおります」
薫は眉を顰める。
さっきの野獣のように獰猛で官能的な熱が、泉から嘘のように消え去っているのが歯痒い。
「なんで⁈泉は僕が大人になっても恋人にしてくれないの?なんでだよ…!」
「…先のことは誰にもわかりません。…薫様はきっと、華やかな恋をなさるでしょう。
私などよりもっと貴方に相応しい運命の方に巡り会われるかも知れません。…いえ、きっと巡り会われます。…それを私に見届けさせてください」
柔らかな言い方だが、頑として譲らない口調だ。
「…どうして?僕はずっと泉が好きだよ。変わらないよ。…大人になったって…変わらないよ…」
堪えきれずに泣き出した薫の涙を優しく拭う。
そしてあやすように、愛を告白するように、密やかに告げた。
「…例え薫様が大人になられて、他の方に恋をされても…私はずっと薫様が大好きです。貴方の一番の味方です。…そして一生、全力で貴方にお仕えいたします。それを今、お誓いいたします」
「…泉…」
薫は、さながら中世の騎士のように恭しく跪き、薫の手に敬愛のキスをする泉を遣る瀬無く…切なく見つめ続けるのであった。
泉は、兄のような父のような親しみ深い笑みを浮かべる。
「そんなに早く大人にならなくて良いのですよ。…私は薫様が大人になって行かれるご様子をゆっくり拝見したいです…」
「でも…!」
薫は不満そうだ。
「…僕が大人になるまでに、泉に恋人が出来たらどうしたらいいの?」
…気持ちは焦るばかりだ。
泉は大人だ。
あんなにいとも容易く薫に極上の快楽を与えてくれるほどに…成熟した大人の男なのだ。
一方、薫はまだ12歳…子どもだ。
泉に釣り合うまで、あと何年かかるだろう…。
…その間、泉はずっと薫を待っていてくれるのだろうか…。
不安そうな薫を泉は慈愛に満ちた眼差しで見つめる。
「…お約束します。私は薫様が大人になり、薫様に相応しい方と巡り会われるまではずっと一人でおります」
薫は眉を顰める。
さっきの野獣のように獰猛で官能的な熱が、泉から嘘のように消え去っているのが歯痒い。
「なんで⁈泉は僕が大人になっても恋人にしてくれないの?なんでだよ…!」
「…先のことは誰にもわかりません。…薫様はきっと、華やかな恋をなさるでしょう。
私などよりもっと貴方に相応しい運命の方に巡り会われるかも知れません。…いえ、きっと巡り会われます。…それを私に見届けさせてください」
柔らかな言い方だが、頑として譲らない口調だ。
「…どうして?僕はずっと泉が好きだよ。変わらないよ。…大人になったって…変わらないよ…」
堪えきれずに泣き出した薫の涙を優しく拭う。
そしてあやすように、愛を告白するように、密やかに告げた。
「…例え薫様が大人になられて、他の方に恋をされても…私はずっと薫様が大好きです。貴方の一番の味方です。…そして一生、全力で貴方にお仕えいたします。それを今、お誓いいたします」
「…泉…」
薫は、さながら中世の騎士のように恭しく跪き、薫の手に敬愛のキスをする泉を遣る瀬無く…切なく見つめ続けるのであった。