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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
数日後、薫と暁人は鷹司の正式な招待により、彼の別荘に遊びに行くことになった。

薫の行儀の悪さから、薫が他家へ遊びに行くことを渋りがちな光だが、鷹司ならば…と承知したのだ。
「鷹司さんなら良いでしょう。しっかりしていらして大人だし、きっと薫に良い影響を与えてくださるわ。
薫、お行儀良くしているのですよ」
白い麻のブラウスにベリー色のスカートを身につけた光は珍しく機嫌良さげに笑い、朝食の珈琲を口に運んだ。

…お母様はすっかり鷹司先輩に丸め込まれている。
そんな品行方正な人じゃないのに…。
やっぱり、ワルツを申し込まれたりちやほやされたからかな?
…結局、お母様も年下のハンサムな男に弱いだけなんだ。
年増になるとさすがのメドゥーサも甘くなるのかなあ…。

けれど余計なことを言うとせっかくの外出がおじゃんになる。
薫は猫を被ってにこにこした。
「はい、お母様」

珍しく素直な薫に光は気を良くした。
「いつもこうだと良いのだけれど…。あら?暁人さん。…なんだか元気がないみたい。…ご体調でも優れない?」
薫の隣で黙りこくっている暁人を光は目敏く見つけ、声を掛けた。

はっと貌を上げた暁人は、慌てて作り笑いをした。
「…い、いいえ、小母様。大丈夫です」
…けれど朝食の皿はちっとも進んでない。
「どうしたんだよ、暁人。…そういえばここ二、三日元気がないな。熱でもある?」
薫が無造作に暁人の額に額を付ける。
「だ、大丈夫だってば」
慌てふためいた暁人が貌を赤くして、薫を押しやる。
薫は唇をへの字に曲げた。
「…変な奴」

背後から柔らかな美声が聞こえた。
「暁人様、主治医の先生に往診をお願いしましょうか?…夏風邪の引き始めだといけません」
暁人は声の主を咄嗟に見上げる。
執事の制服を隙なく着こなした泉が、優しい微笑みを浮かべながら暁人を見つめていた。

松濤の屋敷ではまだ生田が執事だが、軽井沢の別荘では実質、泉が執事である。
三十を過ぎ野性味や、やや粗野な部分があった物腰や眼差しはすっかりなりを潜め、優雅で落ち着いた気品漂う執事の姿へと成長を遂げていた。

暁人はじっと泉を見上げたのち、ふっと目を逸らし無機質な声で答える。
「…大丈夫。それには及ばない」
いつになく素っ気ない暁人の対応に泉は少し眉を上げたが、それ以上しつこくはせずに一礼をして下がった。


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