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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
いつもと様子が違う暁人に、薫は眉を顰める。
暁人は泉に対してこんなに冷たい返答をすることは今までなかったのだ。
「暁人、何かあった?何だか変だよ」
「…別に…何もないよ…」
俯いてナプキンを畳んだ時、ドアの外からぱたぱたとした軽い足音が聞こえ、賑やかな声とともに菫が飛び込んで来た。
「おにいちゃまたち!どこかにお出かけになるの?ナニーが話していたわ!」
子ども部屋で朝食を終えたらしい菫が薫の元にきて袖を引っ張る。
薄い水色の夏のワンピースを着た菫はとても可愛らしい。
光に生き写しの貌だが、菫にはどことなく愛敬がある所は礼也似なのかもしれない。
薫は菫の小さく整った鼻をつついて揶揄う。
「全く耳ざといなあ、そうだよ。学院の先輩のお家にお邪魔するのさ」
「菫も!菫もいく!」
飛び上がって歓声を上げるのに、薫はつんとそっぽを向いた。
「ダメだよ。お前なんか連れて行ったら足手まといだ。どうせすぐに、おかあちゃまおかあちゃまって言い出すからな」
菫の貌が見る見る内に曇りだし、泣き出しそうになった。
「言わないもん!」
「ほら、もう泣く。泣き虫毛虫挟んで捨てろだ」
薫は菫にアカンベをする。
菫がしゃくりあげる寸前、暁人が優しく膝に抱き上げた。
「菫ちゃん、泣かないで。…今日はうんと年上の人のおうちに招かれているから、菫ちゃんはきっと退屈しちゃうと思うんだ。…帰ってきたら遊んであげるから、小母様と待っていて。…そうだ、おままごとの続きをしよう。マリーベルは舞踏会に行かなくちゃいけないから、新しいドレスに着替えさせてあげていて?」
マリーベルは菫のお気に入りの人形だ。
暁人が菫のお誕生日のお祝いに贈ったのだ。

菫の貌があっという間に明るくなり、弾けるように笑う。
「わかったわ。約束よ!暁人おにいちゃま!早く帰って来てね?」
暁人は菫が可愛くて仕方ないように微笑った。
「約束する。指切りしよう」

二人の可愛らしい指切りを光はうっとりと見つめる。
「本当に暁人さんはお優しいわね。もう女心が分かっていらっしゃるわ」

指切りをしてもらい、上機嫌な菫は暁人に抱きつく。
「菫、暁人おにいちゃま、だいすき!おおきくなったら暁人おにいちゃまのお嫁さんになるの!」
「いいんじゃない?僕も暁人が弟になるなら賛成だ」
薫は冗談ぽく笑う。
それを聞いた暁人は少しだけ寂し気に微笑ったのだった。


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