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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第3章 秘密の花園
「いらっしゃい、よく来たね。君たちが来てくれるのを楽しみにしていたんだ」
追分の鷹司の別荘に着くと、鷹司はその端正な貌に人当たりの良い笑みを浮かべ、両手を広げて二人を歓迎した。

別荘はアールデコ様式の豪奢な中にも遊び心がある洒脱な建物だった。
車寄せには執事始め、家政婦、メイド、下僕がずらりと並び、薫と暁人を恭しく出迎えた。
…それらは薫には見慣れた風景であった。

ただ一つ違うのは…そこに鷹司の両親がいないことであった。
鷹司は17歳にして、この家の当主のように堂々と君臨していた。

夏の麻のジャケットに生成りの胸元が開いたシャツ、ベージュのパンツと大人びた格好だ。

鷹司に誘われて玄関ホールに入る。

別荘とは思えないような緻密にして装飾的なホールだ。
大理石の床に吹き抜けの高い天井、欧州の貴族の館のような調度品や燭台が輝くホールには大型の肖像画が高い位置に飾られていた。

息を飲むほどに美しい貴婦人の肖像画に薫は目を奪われた。
漆黒の髪は華やかな夜会巻きに結われ、きらきらと輝く宝石が散りばめられている。
真紅のドレスを身に纏った透き通るような白い肌、優美な眉、長くけぶる睫毛、黒い宝石の如く黒目勝ちな瞳はどこか人を誘うようにこちらを見つめている。
貴族的な鼻筋は芸術品のようであり、ルビーより艶めき輝く唇は匂うような微笑を浮かべ、見る者を魅了せずにはいられない妖しげな色香を漂わせていた。

見入る薫に鷹司が驚くほどに近くから囁いた。
「僕の母だよ」
「え?先輩の?」
薫の母も若く美しいが、この肖像画の貴婦人はどこか魔を秘めたような…この世ならぬ美しさと妖気を漂わせていたのだ。

「…鷹司公爵夫人、一度父に連れられてオペラを観劇した時にお会いしたことがあります。僕にも優しくお声をかけて下さいました」
薫の横に佇む暁人が口を開いた。
鷹司は明るく笑いながら、肖像画を見上げる。
「君のお父上はハンサムだからな。…どうせ色目を使ったのだろう。…もしかしたら君にもね」
暁人は表情を硬くする。
「そんな!」
鷹司は肩を竦め、鼻先で嗤う。
「いいのさ。気を遣うことはない。…あの人は妖婦だ。しかも飛び切りたちの悪い…」

母親をまるで他人のように…いや、それ以上に冷たく突き放す鷹司に、二人は言葉を失う。
鷹司は愉しげに笑った。
「呆れるほどに美しいが、最低の母親だ…」




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